その6
「な、なんだっ!?」
ロバートが叫ぶ。同時に、部屋の襖を開けて一人の忍が現れた。
「おんばあ様! 奴が現れました!」
「そうかい、きたかい」
「場所はどこだ! すぐに案内しろ!」
ロックが目の色を変えて走ってゆく。シェリルがあたふたしている。
「そんな……おんばあ様! あね様とあに様が、戦うというのですか!」
「シェリルや、さっきはおまえさんをかばったがね、これについては里の問題なんだよ」
シェリルは大きく首をふった。
「私、いやです……いやです、そんなの!」
「シェリル!」
シェリルは振り返って駆けだしていった。コリンがそれを追いかける。
ハヤトは立ち上がってフローラに言った。
「フローラさん……。事情はよくわかりませんが、秋の精霊との契約には、障害があるということですね。だったら、俺もロックさんを手伝いに行きます」
「好きにしなさい。……もっともハヤトさん、あなたにできることはないと思うがね」
それを聞いてパーティ一行が立ち上がる。
口火を切ったのはミランダだった。
「っだーもう! 難しい話はいいんだよ! とにかくそいつをぶっちめりゃあいいんだろ! 行くよみんな!」
全員が返事をし、走ってゆく。
フローラはただ腕を組んで、その様子を見ていた。
ロックは手下の忍者に連れられて、屋敷を駆ける。外に煙が見える。どうやら爆発したのは庭のようだ。
「奴はどっちに行った!」
「わかりません、ですがこの屋敷のなか」
手下の言葉をそこまで聞いたところで、ロックは直刃の忍刀を抜き、手下を地面に叩きつけた。
直後、ロックに向かって鉄の針が無数に飛んできた。彼は刀を素早く振り回し、それらをすべて弾く。
ロックは天窓に足をかけ、針の飛んできた方向に鉄の板、手裏剣を投擲する。同時に足に力を込め、大きく跳躍して中庭へ飛んだ。
松の木の陰に誰かがいる。ロックは手裏剣を投げ続けながら腰を低くし、そちらへ走る。
ロックは大きく息を吸い込んだ。
「『火遁・猛炎弾』!」
ロックの口から炎の弾が飛ぶ。それに気づいた相手は、二本の剣を抜いて叫んだ。
「『火遁・双炎牙』」
炎と炎がぶつかり合い、突風が起こった。
それでもひるまず、ロックは刀を向けて相手に向けてふるった。
金属がぶつかりあう音が、その場に響く。
「……なぜだ」
距離を取り、ロックが言った。
「なぜお前が神器を狙うのだ。答えろ、アンバーッ!」
双剣を構えるアンバー・メイリッジが、鋭いまなざしで彼を見据えていた。