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イモータル・マインド  作者: んきゅ
第12話「秋の忍び里」
91/212

その3

 バドルでしばらく山道を進んでいると、ハヤトは意外なものを目にした。


「これは……竹、か?」


 さっきまで針葉樹ばかりだった森の中に、竹がいくらか植わっている。風に揺れる細い葉が、なんとも言えぬ哀愁を誘う。

 コリンが頷く。


「そう。ザイド・オータムの里はこの竹薮の向こうにある。竹はこのオータムにしか生えない。ハヤトは、この辺りの出身?」

「えっ? いや、そういう訳じゃないんだけどさ」

「なら、オータムに来たことがあるの?」

「ないよ。でも、久しぶりに見た」


 コリンは無表情のまま小首をかしげたが、すぐに眉間にしわを寄せた。


「ひょっとして、からかってる?」

「ち、違うって! 俺の住んでたところにもあったんだよ」


 最後尾でその様子を見ていたミランダが、舌打ちした。


「あのクソピンク頭……アタシのハヤトにちょっかい出しやがって」

「残念だがミランダ。ハヤト君はきみの物と決まった訳じゃない。コリンちゃんにも権利がある。どうやらあの様子だと、またライバルが増えたようだな。ああ、ミランダの立ち位置はどんどん隅に追いやられていくな」


 ロバートはすぐに鉄拳に備えたが、ミランダはうつむいて、ため息をついた。


「……わかってるよ」

「どうしたミランダ? この間の砂漠の時から、なんだか変だぞ? 変なものでも食ったのか?」


 ミランダは少し思い詰めた表情で、自分の乗るバドルをかかとで蹴った。バドルは微妙にうれしそうな声で鳴いて、スピードをあげた。

 ロバートはその様子を見て、腕を組む。


 その時。彼の背後の竹薮から、がさりと音がした。

 ロバートは瞬時に弓を取り出して矢をつがえた。


「誰だ!?」


 全員が、その声に反応して振り返った。

 ほぼ同時に、竹薮から何かが飛んでくる。ロバートはバドルに降りながら、それをかわす。

 背後の木に、金属製のとがった板のようなものが刺さった。

 ロバートが矢を放つと、全身黒装束の男が竹薮から一人現れ、それをはしと掴んだ。

 シェリルがその顔に反応した。


 右目に眼帯をつけた黒髪の男は、力強い眼光をたたえた左目でロバートをにらみつけると、地を蹴って宙を舞った。

 彼は腰に手をつけ、先ほどの金属の板を再び取り出し、ロバートに投げつける。

 ロバートはその場を転がってそれをよけ、再び矢を放つ。

 矢は男に向かってゆく。


 男は空中で手を組み合わせた。


「『火遁・陽炎かげろう』」


 男の姿が歪み、矢をすりぬけた。


「なっ!?」


 ロバートが声をあげる。男はそのままロバートにのしかかって馬乗りになると、腰につけていた短刀を取り出して彼の首にあてがった。

 ハヤトたちは、男に向かって走る。


「やめて! やめてくださいっ、あに様!」


 シェリルの大声が響いた。

 男はそれを聞くと、ロバートを解放して彼女を見る。


「おまえか……。なぜ戻って来た」

「あ、秋の精霊様の契約に、です」

「去れ。里は今、それどころではない」


 男は、その場から消え去るようにして姿を消した。

 シェリルは、それを不安げに見つめていたが、バドルに乗った。


「行きましょう。この先がオータムの里です」

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