その5(終)
マヤはおそるおそる目を開く。
オウルベアが、立っている。さっきの男は……。
そのすぐ前にいた。位置は、直前までと何も変わっていない。
だが、男が何かを握っている。さっきまでの木の棒ではない。
マヤはそれを見て、はっとした。
「あれは……!」
隼人が目を開く。自分の目の前にいた化け物が、胴からまっぷたつになってごろりと倒れた。
その右手には、うっすらと青く輝く剣が握られていた。
「け、剣……?」
残りニ体のオウルベアがそれを見て声をあげる。仲間を殺された怒りか、それとも隼人の持つ剣と、同色に輝く眼に反応したのか。オウルベアたちは隼人に向かって突進した。
隼人には、なぜかそれがスローモーションで見えた。
なんとなくわかる。この剣なら。
隼人は輝く剣を正眼に構え、オウルベアの突進に合わせてそれを振るった。
しゅん、という音とともにオウルベアの体がまっぷたつに斬れる。
もう一体が同じようにして迫ってきたが、隼人が頭を突くと、顔が吹っ飛んで絶命した。
隼人はモンスターたちが消滅していくのを見届けると、剣をじっくりと見た。
特にそれらしい装飾はない。見た目はさっきマヤが振るっていた剣によく似た、西洋のつるぎだ。
しかしその刀身を青白い輝きが、オーラのように包んでいる。刀身そのものも、太陽光を受けて青く反射していた。きのせいか、ところどころが少し傷んでいるように見える。
隼人はマヤを見た。
彼女は口をあんぐりとあけて呆然としていた。隼人はちょっぴり笑ってしまった。
「はは。か、勝てたな」
マヤはそれに反応せず、信じられない、と言ったふうにつぶやいた。
「あ……『蒼きつるぎ』……!」
「へ?」
「ど、どうしてあなたがそれを……!? あなたは一体、何者なの……?」
運命が、動きだした。
【次回】
少年は、魔王と出会う。
次回「俺が勇者で妹魔王」ご期待ください。