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イモータル・マインド  作者: んきゅ
第11話「砂上の遺跡」
87/212

その12(終)

「あれ……」


 ハヤトは、自分の状況にしばらくとまどった。

 剣を、なぜか壁に突き刺している。


 引っこ抜いて、後ろを見る。


 岩と、台座。そしてふわふわと浮くプレート。


 部屋が、元に戻っていた。


「私たち、さっきまで巨人と戦ってたわよ……ね?」


 マヤが隣にいた。翼は既に畳まれているようだ。


『何をしている』


 夏の精霊の声が響いたので、ハヤトたちはぎょっとした。


『加護は済んだ。早く立ち去るがよい』


 その声は、先ほどまでのことを、まるで認識していない様子だった。


「ふう、うまくいったな」


 それを聞いて、すぐ先にいたジョバンニがその場に座って汗をぬぐった。


「ジョバンニさん、どういうことなんですか?」

「なーに。『蒼きつるぎ』の力を、ちょっと借りたんだよ。ともあれ、これで全部元通りだ。悪かったな、勇者一行」


 ハヤトは、剣を鞘におさめる。仲間たちが集まってきたところで、彼は改めて聞いた。


「あなたは一体何者なんですか?」


 ジョバンニはそれを聞いて高笑いした。


「最初に言ったはずだ! おれはジョバンニ! 凄腕のトレジャーハンターだ」

「い、いえ、そういうことではなくて」


 ジョバンニは、立ち上がって帽子を掴み、つばで顔を隠した。


「……さっきのおれの技が、不思議に見えたか? すごいとでも、思ったか?」


 ハヤトは頷いた。

 空中を走る術。強力な「ウォール」と、結界破り。

 そしてこの、「蒼きつるぎ」を使った謎の現象。


 ジョバンニは背中を向けて歩き出した。


「だったらおまえさんは、ソルテスには勝てやしねえぞ」

「ま、待ってください! ソルテスの知り合いなんですか!?」

「……さあな。ザイド・オータムを目指せ。今のおれに言えるのはそのくらいだ。じゃあな。今回は悪かった」


 「また会おう」と言い残し、ジョバンニは部屋から去っていった。


「一体なんだったのかしら、あの人?」


 マヤがつぶやいた。ロバートは頭をかく。


「魔王軍……って感じでもなさそうだったけどな。だがちょっと異常だったぜ、あの技は」

「ええ、明らかに私たちの理解をこえたレベルのものだったわ。仲間になってくれれば、すごい戦力になるんだけどなあ。ねえミランダさん?」

「あ、ああ。そうだね……」

「どうしたミランダ。元気がないじゃないか。暑さでバテたか?」

「ち、ちがわい!」


 談笑するパーティ一行を後目に、ハヤトは入り口付近で立っていたコリンの元へと近づいていく。

 コリンは、目を伏せてから、肩をすくめる。


「見せてもらった。あなたの『蒼きつるぎ』は本物みたいね。それだけは認める」

「……君は、ソルテスを助けてくれたんだな」


 ハヤトは、さっきまで夢のように見えていた光景を思い浮かべる。

 あれが、過去の光景なのだとしたら。

 小さなコリンを守っていた「蒼きつるぎ」の使い手は紛れもなく、ユイだった。

 そして彼女は言っていた。「あなたたちに助けてもらった」と。


 コリンは、何も応えなかったが、ハヤトは、その肩を両手でつかんだ。

 コリンは体をはねさせた。

 ハヤトは彼女に顔を近づけた。コリンの猫みたいな目が、大きく開く。


「な、なに」

「あいつを助けてくれて、ありがとう」


 ハヤトは、笑顔で言った。


「やっぱり俺、あいつに会わなきゃ。君を守らないで何やってんだって、言いにいかなきゃな。だから、今後も案内を頼む」

 コリンは、それを聞いてしばらくぼーっとしていたが、彼の手をはじいて後ろを向いた。


「さっきも言ったけど、あなたは、甘い」

「わかってるさ」


「でも、嫌いじゃない」


 彼女のつぶやきは、誰にも聞こえなかった。

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