その11
雨の中、小さな少女が泣いていた。
辺りには瓦礫の山が散乱している。
「お母さん……お父さん……」
少女はうわごとのように、同じことを言い続けていた。
目の前には、おそらく屋根だったであろう煉瓦が、ばらばらに積み重なっていた。
羽のついた人型のモンスターがそれに気づき、彼女の背後へと歩いてゆく。顔を上げて振り返った少女は、悲鳴を上げた。
だが、モンスターは次の瞬間、縦に割れるようにして消えた。
すぐ背後で、鎧を着た黒髪の少女が、剣を地面に叩きつけるようにしていた。
黒髪の少女は、悲しげに言う。
「ごめんねコリン、間に合わなかった。ごめんね……あなたたちに助けてもらった恩を、返せなかった」
それまで泣いていたコリンは、彼女に向かって走り、抱きついた。
「お父さんが……お母さんも……」
黒髪の少女は腰をおとし、彼女を抱きしめた。
「ごめん……! でも、私が全部、責任をとるから。この街とあなたは私が、絶対に守るから……!」
さっきのモンスターが数体、彼女たちの元へと飛んできた。
黒髪の少女は、コリンをぎゅっと抱いたあと、彼女を物陰に押しやった。
少女は、剣を構える。
その瞳が、少しずつ蒼い光を伴っていく。
「あなたたちだけは……絶対に!」
少女の持つ剣が、変質していく。
コリンが叫んだ。
「ソルテスっ!」
「蒼きつるぎ」を手に取ったソルテスは、地面を飛び上がってモンスターに向かっていった。