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イモータル・マインド  作者: んきゅ
第11話「砂上の遺跡」
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その10

 ハヤトは空中に投げ出された。

 体は無事だ。どうやら「蒼きつるぎ」が相殺したらしい。

 だが、手足がうまく動かない。


「ハヤト君!」


 遥か下方で、それを見ていたマヤが、駆けだした。

 彼を助けるべき時が来た。

 今こそ、彼のための力を!


 マヤの背中から、二本の棒が飛び出した。

 棒は回りながら開いてゆき、柔らかな金色の翼へと変わる。

 彼女はその場を飛び上がり、空中のハヤトをキャッチした。

 

「大丈夫?」

「マヤか……助かった」


 ハヤトは言いながら、もう一つの意味で助かったと感じていた。


 あのタイミングで攻撃が来てくれて、よかった。

 もしあのまま力を消費し続けていたら……。


 考えている間にも、巨人の胸が光る。

 マヤはその場を切り返し、光線をかわす。


「広いといっても天井があるから、自由に飛べないわね……。ハヤト君、どうすればいい?」


 ハヤトは返答に迷った。

 さっきの攻撃を繰り返しても、障壁を貫き切れないことには……。


「おい、二人とも」


 ハヤトとマヤは、思わず空中でびくりとした。

 すぐ横に、ジョバンニが立っていた。

 もちろん、空中である。だが彼は微動だにせず、腕を組んでその場にたたずんでいた。


「ジョバンニさん!?」

「驚いたぜ、まさかこんなことになっちまうなんてなあ。悪かった」

「それより、どうしてそんな風に飛んでるんですか!?」


 言われて、ジョバンニは笑った。


「はっはっは。細かいことは気にすんな! それより、この騒ぎの責任を取りてぇ。だがあのごっつい障壁を“魔力”でぶっこわすのは、ちょっとばかし効率が悪い。……おれに考えがあるんだが、一緒にやってくれないか?」


 もはや選択の余地などなかった。

 二人が頷くと、ジョバンニは帽子のつばをもってぐいと下げた。


「さすが、話が早いな。じゃあ、おれが前衛だ。あの魔法光線はなんとかするから、ついてきてくれ!」

「ジョ、ジョバンニさん! あの光線の“魔力”はけた違いなんですよ!」

「男は度胸だ!」

「そ、そういう問題じゃないですよっ!」


 ハヤトが言い終わる前に、ジョバンニが足を前方に踏み出す。

 彼の足はしっかりと空中をふみしめ、なんと宙を走り出した。


 その不思議な光景に、思わずぽかんと見とれるハヤトとマヤだったが、今はそんなことをしている場合ではない。マヤは翼をはためかせ、その後を追った。


 巨人の胸がちかちかと光りだす。


「ジョバンニさん、来ますよ!」

「よけいなことは考えるな!」


 “魔力”の光線が発射される。

 ジョバンニは、そのタイミングに合わせ、右手を前に突きだした。


「破れるものならやってみろい! 『ジョバンニ・シールド』!」


 ジョバンニの手から、大きな六角形の「ウォール」のようなものが飛び出した。光線が爆発したが、彼の名を冠した盾はそのまま残った。


「なっ……!」


 とりあえず名前のセンスは置いておいて、背後で見ていたハヤトは驚愕した。

 ルーとマヤの二人で作った「ウォール」でさえ、はじくのがやっとだったと言うのに、彼のそれはびくともしていない。


「魔法の次は物理攻撃が来る! 二人とも、左だ!」


 二人が左方を見ると、巨人の右手が迫って来ていた。

 ジョバンニは叫んだ。


「しゃらくせえっ! 『ジョバンニ・エクスプロージョン』!」


 ジョバンニが腕をなぐと、きらきらと周囲が輝くと共に、爆発を起こした。

 巨人の右腕が二の腕あたりまで崩壊し、ぼろぼろと地面に落ちていく。


「どうやら手足には障壁がないらしいな! 今がチャンスだ、一気に行くぞ!」


 三人は胸元へと一直線に進む。

 ジョバンニが走りながら、両手を突き出す。


「いいか、おれが今から障壁に穴を開ける! 『蒼きつるぎ』でそいつのコアを突け! そして念じろ、さっきまでの、俺が来る前の光景を!」

「ど、どういうことですか!?」

「説明してる暇はねえっ! やるぞ!」


 ジョバンニは巨人の胸を覆う障壁に手を当てた。


「いっくぜええ! 『ジョバンニ・ニュートライズ』ッ!」


 さっきよりも小さい、六角形型の「ウォール」が彼の手のひらに現れた。大きさが安定せず、大小を繰り返す。

 ジョバンニは苦しげにうなった。


「ぐうっ……! なんつう障壁だ!」


 しかし。彼は笑った。


「だが! この状況! こういう逆境でこそ燃えるのが……男ってもんだぜっ!」


 六角形の「ウォール」が、大きく展開され、障壁に穴が作られた。


「今だ、やれ!」


 マヤとハヤトは、黄色く輝くコアに向けて飛ぶ。


「ハヤト君、頼むわよ!」


 マヤは、手を離してハヤトをその場に落とす。


 ハヤトが、落ちながら切っ先を前方に向けた。

 剣の輝きが増し、“魔力”がほとばしる。


「貫けええっ!」


 「蒼きつるぎ」は、ついに巨人のコアをとらえた。


 ハヤトはすぐに、先ほどジョバンニに言われたように念じた。

 さっきまでの景色。この部屋に来た時の、あの光景。


 辺りが蒼い光に包まれだし、巨人の体じゅうに亀裂が入る。

 ジョバンニは目を閉じてハヤトに向けて手をかざし、何かを叫んだ。

 輝きが増し、とうとう巨人は体全体から砕け散った。


 コリンは口をあけて、それをぽかんと見上げていた。

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