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イモータル・マインド  作者: んきゅ
第11話「砂上の遺跡」
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その9

「全員、援護してくれ!」


 ハヤトは地を蹴り、飛び出した。仲間たちも同時に走り出す。

 巨人の胸が光る。

 ミランダが舌打ちした。


「さっきのが来るよ!」

「任せて! ルーちゃん!」

「はいなの!」


 マヤとルーが“魔力”を練る。


「『ウォール』っ!」


 巨人の放った光線が射出されるのと同時に、空中に“魔力”の壁が構築される。

 二人の作った「ウォール」はあっけなく破壊されたが、光線の方向が変わり、天井で爆発した。


「今のを食らったら一発でおだぶつなの!」

「だったら、一撃で決めればいい!」


 ハヤトは一直線に駆けていく。後ろにロバート、ミランダがつく。


「ハヤト君、足しになるかわからんが、君とミランダに『チャージ』をかける。ミランダは援護しろ!」

「へっ、後ろから指示とは偉くなったもんだね、ロバート!」

「うるさい!」


 ロバートは両手に“魔力”を込め、二人の背中を叩く。

 ハヤト、ミランダの両者はぐんとスピードアップした。


「よし、このまま行くぞ!」

「ハヤト、上っ!」


 ハヤトが見上げると、巨大な岩の手が、こちらに落下してきていた。


「うわああっ!?」


 ミランダはハヤトを突き飛ばすようにして、横っ飛びする。岩の拳は地面にたたきつけられると、床を吹き飛ばしながらバラバラになった。

 ミランダは指をはじいた。


「バカめ! 自爆しやがった!」


 だが、巨人が腕を上げると、ばらけた部品が飛んでいき、拳が再生された。


「そっ、そんなのありかい!?」

「サンキュー、ミランダさん!」


 ミランダはしばし硬直していたが、すでにハヤトが走り出しているのを見て、後に続く。


 ハヤトは、巨人の足下付近までたどり着く。


 決める。一発だ。


 ハヤトは脚に力を込め、大きく跳躍した。

 ぐんぐんと巨人の中心に向かっていくが、その胸がまたしても光るのが見えた。

 ハヤトはとっさに、「蒼きつるぎ」の刀身を盾代わりにして上方に向けたが、“魔力”の光線は途中で跳ね返っていった。

 きっとルーたちの「ウォール」だ。


 ぼんやり光る、巨人の胸が近づいてくる。

 ハヤトは「蒼きつるぎ」を振りかぶった。


「いくぞおおおおおっ!」


 ハヤトは、巨人の胸部めがけて「蒼きつるぎ」を叩きつけた。


 だが、その寸前の部分で、剣が止まった。

 “魔力”の火花が散る。


「障壁かっ!?」


 よく見ると、ビンスが使っていた“魔力”の障壁が、斬撃を阻んでいた。ハヤトは力任せに「つるぎ」をおしやったが、火花が散るばかりで、進んで行かない。

 こんなことは初めてだ。それだけ、この巨人の持つ“魔力”が強いということなのだろうか。


 だったら……! と、ハヤトは叫んだ。


「この障壁を、『破壊』するっ!」


 刀身が輝きを増した。

 同時に、少しずつ剣が先に進み出す。

 もう少しだ。だが進みが遅い。


 そうだ、「蒼きつるぎ」の本質が「破壊」だと言うのなら。

 この巨人ごと破壊できはしないだろうか?

 考える時間も惜しいハヤトは、そのまま口を開く。


「この巨人を!」


 だが、その時。

 これまでにない悪寒が、彼を襲った。


 嫌な予感がする。何かまずいことでもあるのだろうか。

 だが、ここで倒しておかなければ。


「『破壊』……!」


 言葉は、そこで止まった。

 「蒼きつるぎ」の柄の先端についている紅い飾りが、強く輝き出した。同時に、彼の体に、押しつぶされそうなほどの衝撃がのしかかった。


「ぐあああっ!」


 この衝撃には、覚えがある。というよりも、記憶に新しい。

 「ザイド・アトランティック」号を持ち上げようとした時のものと同じだ。

 ハヤトは、そこで出会った謎の女・アンバーの言葉を思い出した。


『やはりこの規模の破壊を行使するには……“魔力”が足りないか』


 つまりは、対象が大きすぎたのだ。

 この攻撃は失敗だ。


 ハヤトは、だんだんと自分の力が抜けていくことに気が付いた。

 まるで、剣に自分の生命力を吸われているようだ。

 もはや自力で、攻撃をおさえつけることさえできない。


 まずい。このままでは!


 彼が恐怖にかられ始めたその時、巨人の胸が光り、爆発が起こった。

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