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イモータル・マインド  作者: んきゅ
第11話「砂上の遺跡」
82/212

その7

『人間か』


 ハヤトたちが歩いて近づいていくと、台の方角から声がした。力強く太い、男性の声だった。


 コリンが前に出て、ひざをつく。


「夏の精霊様。スプリングのコリン・レディングでございます」


 コリンの口調や声色は、明らかにこれまでのそれと異なっていた。それだけ気を使うべき相手なのだろう。


『覚えている。ルドルフはよくやっているか』

「もちろんでございます。精霊様、本日は加護の契約をお願いできればと、こちらに参りました」


 少し間を置いて、声が返ってくる。


『こやつらは何者だ』

「……『蒼きつるぎ』の勇者一行、でございます」


 コリンは、少し言いにくそうにしていた。


『勇者……? ソルテスはどうした』

「ソルテスは、その……」

『人間であれば、以前ソルテスと契約をしたはずだ。勇者はソルテス一人だ。きさまにもわからないわけではあるまい』

「う……」


 コリンがひるんでいると、背後から声がとんだ。


「ソルテスは、魔王になりました。俺はハヤトと言います。今は俺が勇者ということになります」


 コリンは驚いて、思わず立ち上がってしまった。ハヤトは彼女に目配せする。


『ソルテスが、魔王に? どういうことだ』

「その理由を確かめるために、魔王の島へと向かう旅をしています」

『なんと愚かな……! 加護を受けた人間、それも勇者が魔王などと!』

「彼女を止めるためには、あなたの加護が必要です。どうか、お願いします」

『ありえぬ! 同時期にあれの使い手が二人も存在できるはずがない。貴様は偽物だ!』


 怒号がとんだ。

 誰もが息を飲んだが、ハヤトは黙って剣を抜いた。

 すぐに周囲が蒼い光に包まれ、「蒼きつるぎ」が姿を現す。


『おおお……』


 夏の精霊の声は、嘆いているようにも聞こえた。


『まさか、そんなことが……まさかソルテスは、既に……』


 ハヤトは蒼い瞳を見開いた。


「ソルテスの現状について、何か知っているのですか!?」


 夏の精霊は答えなかった。


『貴様らに加護を授ける』

「待ってください! まだ話は!」


 ハヤトは問いただそうとしたが、コリンにそっと止められた。

 ここで夏の精霊を怒らせてしまっては、元も子もない。ハヤトは気持ちを抑え、剣を鞘に戻した。


 一行の体の周りを、黄色い“魔力”のようなものが覆った。

 ハヤトはスプリングの時のように、再び過去のビジョンが現れることを期待したが、特になにも起こらなかった。


『加護は済んだ。次の精霊の元へと行くがいい』


 全員がほっと息をついた。

 魔王軍もいないようだし、どうやらここでの目的はすんなり達成されそうだ。


 コリンが下げていた頭を上げた。


「ありがとうございます。では、これで……」


 その時。

 ハヤトたちの背後から何かが細いものが飛び出し、台座へと向かう。

 それが先端を縛って輪にしたロープだとわかった頃には、プレートを輪っかが掴んでいた。


「やったぜ、ヒャッホー! お宝ゲットだ!」


 凄腕トレジャーハンターの笑い声が響いた。

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