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イモータル・マインド  作者: んきゅ
第10話「春の都」
72/212

その6

「……うえ」


 ハヤトは店の外に腰掛け、風にあたっていた。

 初めての酒は、おせじにもおいしいとは言えなかった。


 ルー以外の三人の声が、時折店内から聞こえてくる。先ほどまでより、かなりテンションが上がっているように感じられる。

 何より彼女らは、とても楽しそうに思えた。それが少しばかり、悔しかった。

 こんなことなら、自分も飲めるようになっておくんだった。


 ハヤトはしばらく頭を冷やした後、店に戻ろうとその場を立った。


「ひゃあ!?」

「わあ!?」


 ハヤトは思わず声をあげてのけぞった。

 立ち上がったすぐ目の先に、一人の女性がいたのだ。

 全く同じタイミングでリアクションを取った彼女は、セミロングにそろえた藍色の髪をゆらしながらバランスをくずし、尻餅をついて転んでしまった。

 ハヤトはあわてて彼女に手を差し出した。


「す、すみません、よく見てなくて。大丈夫ですか?」


 女性はその手を見て、さらにおどおどしだした。


「あ……! あう……!」

「ど、どうしました?」


 ハヤトが困惑しながら言うが、女性は恥ずかしげに目を泳がせ、そのまま硬直してしまった。

 ハヤトにはわけがわからなかった。


「シェリル、ちょっとテンパりすぎ」


 その後ろからもう一人、小柄な短髪の少女が現れ、シェリルと呼ばれた女性の手を取った。


「コ、コリン……。ひどいです、一人で行かせるなんて」

「だってそのほうが、おもしろいと思ったから」

「お、おもしろいって……」


 立ち上がったシェリルは肩を落とした。小柄な少女・コリンが、ハヤトを見る。


「ごめん。シェリルはこの背丈のくせにねんねだから、男の人とまともに会話ができないの」

「は、はあ」

「こ、コリン!」

「事実じゃん」


 コリンはあせるシェリルの背後にまわり、肩を掴んでぐいとハヤトの目の前に立たせた。

 彼女の背はコリンが言うとおり高く、ハヤトは上を見上げる格好になる。

 ミランダと同じくらいだろうか。


「さあシェリル、今度こそしっかりと」

「うっ……」


 シェリルは、またもや何かを言いかけてもじもじしだした。

 ハヤトは頭をかく。


「え、えーと。何か、ご用ですか?」


 シェリルはしばらく返答しなかったが、つばを二、三度飲み込んで、ようやく言った。


「……ちょ……」

「ちょ?」


 シェリルが“魔力”を込めた手で、ハヤトの頭を掴んだ。


「ちょっとだけ、眠っていてください」

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