その3
「な……」
隼人は言葉を失った。熊? 似ているが、違う。何よりも熊よりも大きく、腕が鳥の翼のようになっている。化け物は敵意をむき出しにして、真っ赤に輝く瞳をこちらに向けている。
「オウルベア……どうしてこんなところに!?」
マヤが驚いた様子で言った。
「な、なんなんだよ、こいつ。ちょっとふつうじゃないぞ!」
「確かに変ね。こんなところにモンスターが出るなんて」
「モンスター? な、なんだよモンスターって」
「気をつけて、来るわよ!」
オウルベアは大きなうなり声をあげて、こちらに突進してくる。
隼人は恐怖とパニックで身動きすら取れない。
眼前まで迫ったところで、オウルベアの顔面に火花が走った。
マヤがまた電撃を放ったのだ。
「なにやってるのよ、逃げるわよ! 二人で勝てる相手じゃないっ!」
オウルベアがひるんでいるすきに、マヤは隼人の手を取り、駆けだした。
「なあ、おい、説明してくれ! 一体ここはどこなんだ! 一体なにが起こってるんだ!?」
走りながら隼人が叫ぶ。すぐ横を走るマヤは不思議そうに彼を見る。
「あんたこそなんなの? さっきからちょっとおかしいわよ」
「おかしくもなるよ! 真矢が金髪で、電気を撃って、剣で襲いかかってきて、果てにはモンスターだって!? どうしちまったんだよ俺の頭!?」
マヤの頭にハテナマークが浮かぶ。しかし彼女はすぐにかぶりをふった。
「落ち着きなさい。とにかく、こうなったからには協力しましょう。剣もなくなっちゃったし、逃げることしかできないけど……オウルベアの足は遅いから、なんとかなるはずよ」
「ほんとかよ?」
「大丈夫よ」
その時、すぐ先の草むらが揺れた。
オウルベアだ。
マヤの表情が変わった。
「……囲まれたりしなきゃ、の話だけど。右に曲がって!」
二人はオウルベアを左手に見ながら右に曲がる。
がさ。また草むらがゆれる。嫌な予感がした。
またしてもオウルベアだ。
「嘘でしょ!?」
マヤが足を止めて叫ぶ。
二人はオウルベア三匹に囲まれてしまった。