表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イモータル・マインド  作者: んきゅ
第10話「春の都」
69/212

その3

「なんだか、えらい疑われっぷりだったなあ」


 城の一室に案内されたハヤトは、傷だらけの鎧を脱ぎ、城から支給された布の服に袖を通しながら言った。

 マヤは隣のベッドへと座った。


「仕方ないわ。元々ザイド王国は、ソルテスに救われた国として有名ですもの。ソルテスを神と崇める人も少なくないって話よ」

「にしても、ちょっとあの反応はねえ。あの船、『ザイド・なんちゃら』って言うんだろ? つまりアタシたちは、この国の船を救ったんだよ。もうちょっと感謝されてもいい気がするけどねえ」

「ミランダ、船を救ったのはハヤト君とマヤの二人だ。君は俺の矢を勝手に取ってぶんぶん投げていただけだ」

「ぎゃーぎゃ騒いでばっかりいたあんたに言われたくないよ!」


 ロバートの首にミランダの股がはさまり、彼の頭が猛烈な勢いで地面に打ち付けられた。

 プロレスの技はこの世界でも通用するものなのだ、とハヤトは関心した。



 魔王軍やクラーケンの襲撃を退けた「ザイド・アトランティック」号は、ハヤトらの活躍もあり、なんとかザイド王国へとたどりついた。

 しかし、その到着方法は、ルドルフが指摘した通り、あまりにも強引かつ無茶苦茶なものだと言えた。


 それでも、ハヤトは満足感を覚えていた。

 今回船に乗った人間の中に、死者は出なかったらしい。

 涙を流しながら自分の手を取るバッシュ船長が、何度も強調して言ってくれた。

「君はまさしく勇者だ」と。


 なにより、みんなを護ることができた。旅を続けることができる。それが一番うれしかった。


 ちなみに、西山楓にそっくりな女、アンバー・メイリッジは到着後すぐ姿を消した。


「少しだけ、考える余地ができた。だが忘れないでほしい。君の力は、とても危険なものなのだと」


 そう言う彼女の顔は、やはり少しばかり悲しそうだった。

 彼女はいったい、何者なのだろうか。魔王軍のリブレとは知り合いだったようだが。

 何にせよ、マヤと森野真矢のように、西山楓と何らかの関係があるのかもしれない。

 ハヤトはなんとなく、感じていた。彼女とはまたどこかで会うことになるに違いない。


 その時、「ぐう」と音が鳴った。

 音の主は、ルーの腹だった。

 彼女は三角耳を垂れさせて、おなかをおさえた。


「ルー、おなかすいたの」

「確かにな。船での戦いですっかり忘れてたけど、もう丸一日近く何も食べてなかったぜ。なあ、城下町に出て、何か食べて来ようぜ」


 ロバートも同じようにする。ハヤトは意外そうにした。


「えっ、城でご飯とか、用意してくれるんじゃないんですか」


 ミランダがハヤトの頬をぐに、とつついた。


「ハヤト、わかってないなあ。こんなキナくさいところでメシなんて食ったってうまくないよ。でかい町にたどり着いたら、その夜はもちろん……」

「もちろん?」


 ロバートとミランダが同時に言った。


「酒場だ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ