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イモータル・マインド  作者: んきゅ
第10話「春の都」
67/212

その1

「戻りましたわ」


 レジーナ・アバネイルが薄暗い空間のドアを開ける。

 金髪の魔術師が、青白い光の点がちりばめられた空間を歩きながらすぐに出迎えた。


「ご苦労だった。どうだ、首尾は」

「なんとか。詳細を話す前に、彼を。ああ、重かった」


 レジーナは、自分の“魔力”で浮かせていたリブレ・ラーソンを部屋内に入れ、床にどさりと落とした。

 リブレは、目を開いたままがちがちとふるえ、何かをぶつぶつとつぶやいている。

 金髪の男はすぐに表情を変えた。


「リブレ! いったい何があったんだ」

「……勇者の攻撃が男らしくないとか言って切れちゃって、使ったんですのよ。『あれ』を」


 金髪の男は舌打ちして、彼の肩を掴んだ。


「リブレ、落ち着け。俺がわかるか」

「……グ、グラン……」


 リブレはうつろげな目を彼に向け、小さく言った。金髪の男・グランは頷いて、彼の腕を肩にかけた。


「ソルテス! リブレがまずい。すぐに頼む」


 グランは、玉座に腰掛ける紅い髪の少女に向かって言った。少女・ソルテスが手をかざすと、紅い光がリブレを包み込んだ。


「なあ、グラン……」


 多少楽になったのか、さっきよりも正気を取り戻した様子のリブレは、荒い息を吐きながらつぶやいた。


「船を……斬ったんだ。僕たちのやっていることって……ひょっとしてさ……」

「リブレ、何も言うな。お前はとりあえず休め。苦労をかけたな」


 グランが彼の肩に手をかけると、リブレの姿は光を伴って消え去った。

 レジーナは肩をすくめる。


「グラン、あなたは少しリブレに甘すぎてよ」

「うるせえ。『あれ』を使わせるまで放っておいたお前にも責任がある」

「まあ、なんて人聞きの悪い! 私は止めたんですのよ。それに、アンバー・メイリッジが現れましたわ。召還したクラーケンを一匹沈められて、計画が少し狂わされましたの」


 グランの表情が、一瞬にして冷たくなる。


「奴か……殺したのか?」

「いいえ。任務を優先しましたわ。まずかったかしら?」

「別にいいさ。どうせ奴は何も知らんからな。計画に狂いはない。……それで、どうだったんだ」

「勇者は、仲間を一人『ブレイク』させましたわ」


 グランはさっきの玉座に振り返った。


「聞いたかソルテス。これでしばらくは大丈夫だ」


 ソルテスは、喜ぶわけでもなく、悲しむわけでもなく。

 ただ、わずかに頷いた。

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