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イモータル・マインド  作者: んきゅ
第9話「海上決戦」
64/212

その12

 船首が切り落とされた「ザイド・アトランティック」号はゆっくりと前傾し、少しずつ海へと飲み込まれていく。

 リブレはそれを見て大笑いした。


「ざまあみろ! お前らはこれで誰も助からな……」


 言葉の途中で、リブレは頭を抱えて倒れ込んだ。

 レジーナが背後で、冷たい視線をなげかけていた。


「本当にどうしようもないおバカさんですわね、あなたは。今の状況でそれを使って、無事ですむとでも思っていたの?」


 リブレはそのまま寝そべって、がちがちとふるえだした。


「あ……ああっ……ぼくは……ぼくはなんてことを……」


 その表情からは、明らかな動揺と恐怖とが見て取れた。レジーナはそれを見て、彼を蹴りつけるようにして小舟に乗せた。


「あーあ、やっぱり戻っちゃいましたわね。とにかく城に帰りますわよ。……勇者ハヤトの、腕の見せ所ですわね」


 レジーナたちの乗った小舟は、空へと消えていった。



 一方、傾いていく船上は、再びパニック状態に陥っていた。


「ちくしょう、あの野郎! 最後の最後にとんでもねえことしていきやがって。おい、走るより何かにつかまれっ! 海に落とされるぞっ!」


 ロバートが折れたマストにつかまりながら、空を仰いだ。乗客や船員たちは、落ちまいと必死に船尾方向へと走り出す。


「くそっ、油断した……! まさかあれを食らって立ち上がるなんて」


 ハヤトは剣を甲板に突き立ててその場にとどまっている。彼の肩にはマヤとミランダの二人がつかまっていた。ミランダの腕にはルーが抱かれている。


 そうこうしているうちに、船は海に沈んでゆき、甲板の角度がだんだんと上がっていく。もう少しで、立っていることさえ難しくなる。


 乗客の少女が、両親と抱き合って泣いているのが見えた。

 そう、わかっているのだ。

 もう、こうなってしまっては助かる道はない。


 ハヤトは思わず目をぎゅっと閉じた。

 大逆転に興奮し、気持ちがゆるんでしまっていた。


 こんなんじゃ、誰も護れやしない。


「ハヤト君」


 声の主はマヤだった。


「まだ、終わってないわ。目を閉じないで。きっと私はまた、飛べるから……」


 その時、さっきの少女が、甲板を滑って海へと落ちていった。


 ハヤトたちはとっさに手を離して彼女の救助へ向かおうとしたが、その前に、海面に一人の女性が立っているのが見えた。


「『氷遁・凍雨結界とうろうけっかい』」


 船体を飲み込もうとしていた海の周辺が一瞬にして凍りつき、その場に固定された。


「『蒼きつるぎ』の勇者ハヤト」


 少女を抱きとめたアンバーは、ハヤトに向かって言った。


「もはやこうなってしまった以上、お前に『力』を使うな、などとは言えない。私の『凍雨結界』はそう長くはもたない。『蒼きつるぎ』の破壊の力を借りたい」

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