表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イモータル・マインド  作者: んきゅ
第9話「海上決戦」
63/212

その11

 キング・クラーケンが消滅を始めると、乗客たちは声を上げて歓喜した。

 マストをいくつも折った触手まで全てが空へととけてゆき、船は救われた。


 歓声を浴びながら、二人は甲板に着地する。マヤの翼はそこで折りたたまれるようにして、姿を消した。

 ほぼ同時に、ミランダが飛び込んで来る。


「ハヤト、マヤ! あんたたちなら生きてるって信じてたよ!」

「ミランダ、さっきまで二人の仇は自分が取るって言ってたじゃな」


 ロバートはそこまで言ったところでミランダにはり倒された。


「マヤ、すごいの。はねが生えてたの。それに、“魔力”も強くなってるの!」


 ルーがぽんぽんはねながら、マヤにとびついた。

 マヤは恥ずかしげに笑みを浮かべた。


「『力』を、もらったの」



「大丈夫、リブレ?」


 レジーナは小舟を彼の元へと近づけて言った。

 リブレは、「ウォール」の上で仰向けになっている。


「うぐっ……」


 彼の腹には、先ほどの戦闘でついたものより大きな刀傷が刻まれていた。インパクト時の衝撃によるものか、傷は拡散して左頬にまで達している。


「なんとか、生きてるみたいですわね。もう行きますわよ」

「……ふざけるなよ」


 レジーナは回復魔法をかけながらも、眉をひそめる。


「何ですの、その汚らしい言葉は? 私たちの仕事は終わったんですのよ」

「ふざけるなって言ってんだよ……!」


 リブレはむくりと起きあがった。

 彼の表情に、この船を襲撃してきた時の余裕は微塵も感じられない。こめかみに青筋をたてながら、涙を流している。


「どうして帰るだなんて言うんだよ、レジーナ」

「あらリブレ。切れちゃったの?」

「あいつら、不意打ちしたんだぜ。汚いよ……! こんなの、男のすることじゃない……!」

「まあ、片方は女ですし」

「君は女だからわからないんだよ! この圧倒的屈辱! この無粋さが!」

「……回復、やめようかしら」


 リブレは剣を抜いて立ち上がった。

 彼は険しい表情で、「ザイド・アトランティック」号を見下した。頬からどろりと血が垂れた。


「絶対に許さない。ぜったいに許さない、ぜったいにゆるさない……」


 リブレはポケットをまさぐり、紅いガラスの欠片のようなものを取り出した。

 レジーナはそれを見るや否や、小舟を降りて彼の手首を掴む。


「や、やめなさい!」

「ハヤト……! お前だけは許さない!」


 レジーナをつきとばしたリブレがそれを握りつぶすと、彼の右目が紅く輝き出した。


 異変に、船上のハヤトが気がついた。

 はるか上空にたたずむリブレ・ラーソンが親の敵を見るかのように、こちらをにらみつけている。


「みんな、逃げろっ!」

「全員、死んじまえ」


 リブレが片腕で剣を振るった。


 船首部分に一筋の線が入り、船体が大きく割れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ