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イモータル・マインド  作者: んきゅ
第9話「海上決戦」
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その10

 再び腹を斬られたリブレが宙を舞う。

 舟から身を乗り出したレジーナが「ウォール」を唱え、彼を空中でキャッチした。

 レジーナはマヤの翼を見て、つぶやいた。


「ようやく、ですわね……」


 マヤは大きく旋回し、「ザイド・アトランティック」号へと向かう。


「ハヤト君、いけるわね!?」

「ああっ! そのまま頼む!」


 

 バッシュ船長は、絶望的な表情でキング・クラーケンと戦う戦士たちを見ていた。

 自分の船が、モンスターによって沈没させられようとしている。


 この航海には絶対の自信があった。

 魔王が復活したといえど、「グレイト・クルーズ」さえあれば、どうにかなると思っていた。

 

 だが、現実はどうだ。

 逃げまどう乗客たち、もはや統制の利かなくなった船員たち、そして、ただ見ていることしかできない、船長。


 あまりにも、甘かった。


 バッシュは思わず、ふるえる手を組んで祈りだした。


「か、神よ……。私が間違っていた。あの勇者ソルテス様が魔王などと……でたらめだと思っていた。私のせいで、こんなことになってしまったのだ……! 私のことはいい、どうか無関係の乗客、乗員たちを……お救いになってください。どうか、どうかご慈悲を!」


 その時、空がきらりと輝くのが見えた。

 バッシュが目をこらして見ると、自分の真上に、何かが飛んでいるのが見えた。

 翼の生えた少女と、先ほど自分を救ってくれた少年だった。


「マヤ、準備完了だっ!」


 ハヤトは片手に「蒼きつるぎ」をぐっと握って構える。マヤは力強く頷いて、金色の翼をひらめかせ、船の先でうごめくキング・クラーケンの本体へと向かう。


 危機を察してか、キング・クラーケンの触手が動いた。

 大小合わせ、十、二十のそれがハヤトとマヤめがけて飛んだが、マヤはその全てをすりぬけるようにして避けてみせた。


 ハヤトは、すぐ眼前にせまった本体へ向け、「蒼きつるぎ」を向けた。

 彼の蒼い瞳が、鋭くなる。


「マヤっ!」

「ええ!」


 もう、二人にそれ以上の確認は必要なかった。


「いっけえええーーっ!」


 蒼い閃光となったハヤトとマヤは、勢いのままキング・クラーケンの体を貫いた。


 乗客たちは、キングクラーケンの動きが止まるのを見て、沈黙した。ロバートも、ミランダも、ルーも、固唾を飲んでそれを見ていた。


 ただひとり、折れたマストに立っていたアンバー・メイリッジだけが、悔しさと悲しさを入り交じらせたような、複雑な表情で目を伏せていた。

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