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イモータル・マインド  作者: んきゅ
第9話「海上決戦」
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その9

 マヤは思わず息を止めた。

 自分の体から“魔力”があふれてくる。

 視界が光で包まれ、なにも見えない。


「っ!」


 一種の快感と共に、強烈な衝動が自分の背中を襲う。


 マヤの背中の亀裂から、対になった二本の太い針が飛び出した。

 針はぎゅるぎゅると回転しながら、少しずつほどけるようにして広がり、その姿を露わにする。


 翼。

 彼女の背に、金色に輝く翼が生えた。


「なによ、これ……!」


 マヤが言うと同時に、彼女の体はふわりと浮かび、海中を脱出した。

 彼女の肩に抱きついていたハヤトが叫ぶ。


「翼だ! マヤ、君から生えて来たんだよ!」


 言ってから、ハヤトが自分の体の異変に気づく。

 手足が自由に動く。傷がほぼ完治し、体力も戻っていた。

 手に握られた「蒼きつるぎ」は力強い輝きを放っている。

 ただ、様子が少しだけ変わっており、柄の先端から紅いひものようなものがのびて、ゆらゆらとゆれていた。


 マヤは空にはばたいて、目を閉じた。


「なんとなく、わかる。これは私に与えられた『力』なのね。あなたを助けるための……『翼』」


 マヤは、「ザイド・アトランティック」号を見据えた。


「だったら、できるはずよ。ハヤト君、しっかりつかまっていて」


 マヤは試しに、自分の翼を動かそうと試みた。

 彼女の意志に呼応し、翼はまるで手足と同じように可動する。

 これなら、いける。


 マヤは翼をはためかせ、空を舞う。

 白い輝きの筋を残しながら、マヤとハヤトは船へと向かった。



「『火遁・双炎牙』!」 


 アンバーは依然として船上で戦っていた。

 相手はさっき倒したクラーケンよりも数倍近く大きなキング・クラーケンである。


 マストを掴んで折り続ける触手に炎の双剣をぶつけ、斬撃を連打する。

 触手がばらばらに消し飛ぶが、すぐに新しいそれが彼女の元を襲う。

 アンバーは側転してなんとかそれをかわし、マストに乗りながら本体へと向かう。


「くそ、どうにかならねえのか!」


 パニック状態に陥る甲板の上で、ロバートが叫んだ。辺りを乗客たちが必死に走り回り、中には海に飛び込む者もいる。

 ミランダもルーを肩にのせ、戦いを続けている。


「おチビ!」

「はいなの!」


 ルーが「ガスト」の魔法を唱え、ミランダは大きくジャンプする。彼女はロバートの矢をぐっと握り、空中に浮かぶ小舟に向かってそれを投擲した。


 だが、障壁がそれをはじいた。

 リブレがけだるげに顔をのぞかせた。


「お姉さん、すごいガッツだね。いつまで続けるの、それ」

「あんたが死ぬまで、かな!」

「おお、怖いな」


 ミランダはものすごい形相でリブレをにらみつけた。


「ハヤトとマヤの仇は、アタシが取る!」

「まったく、はた迷惑だなあ。あなたはさっさと殺しちゃった方がよさそうだね」


 リブレが剣を抜こうとしたその時。

 後方から自分を呼ぶ声がした。


「リブレーーーっ!」


 リブレは、はっとして振り返った。


 翼の生えたマヤと、抱えられながら「蒼きつるぎ」を構えるハヤトが向かってくる。


「こいつは、さっきのお返しだ!」


 ハヤトの斬撃が、リブレのどてっ腹に命中した。

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