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イモータル・マインド  作者: んきゅ
第9話「海上決戦」
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その6

 ハヤトは吹き飛ばされ、透明の床にたたきつけられた。


「ちょっと期待はずれだな。こうも簡単に攻略できちゃうなんて」


 リブレはさわやかな笑顔を浮かべながら、首をさすった。


 立ち上がりながら、ハヤトは思った。

 強い。

 「ドール」に攻撃を任せ、その場で立っていただけのビンスと違い、この男はその動きをとらえることすらできない。自分のスピードを完全に上回っている。どうやって攻撃しているのかすら、わからない。


 リブレは剣を抜いた。


「さて……そろそろ、もっと痛くするよ。ついてこられるかい?」


 ハヤトは「蒼きつるぎ」を構えた。

 なんとかしなければ。

 船長室でのやりとりをみる限り、攻撃がヒットすれば勝つことはできそうだ。

 何かできないか。


 リブレが消えたのを見て、ハヤトは再び身構えた。

 次の瞬間、自分の右肩に鋭い痛みが走る。


 剣が、自分の鎧を貫いて深々と突き刺さっていた。


「うわあああっ!」


 思わず声を上げる。

 リブレはかまわず、斬撃を続ける。


「ほら、なんとかしないと死ぬよ」


 ハヤトの鎧に次々と刀傷が刻まれていく。

 そんな中でも、ハヤトは考えていた。


 なんとか、逆転の一撃を。


 まず、この男の意表をついて動きを止めなければならない。

 どうすればいい。

 どうすれば……。


 考えている間にハヤトは頭を蹴られ、再び床へと沈む。

 リブレは剣についた血を払った。


「なんだよ、抵抗する気もなくなっちゃったのかい?」


 ハヤトは、もうろうとする意識の中、自分が寝そべる床を見た。

 はるか下方に「ザイド・アトランティック」号が見える。

 人々がうじゃうじゃと船内を動き回り、パニックに陥っているのがよくわかった。

 この床はガラスみたいに透明だ。

 視点をずらすと、すぐ目の前に赤い点が見えた。自分の血痕だろう。


 そこで、ひらめいた。

 

 ハヤトは、そのままリブレのほうに目をやった。


 彼が払った自分の血痕が、足下についている。

 だが血痕は、途中から折れるようにして上部へと角度を変えていた。

 まるで、そこに透明の壁があるかのように。

 さっき、リブレの仲間と思われる女が魔法を唱えていった。

 きっと「ウォール」でこの空間を作っていったのだ。

 ならば、道はある。


 ハヤトは痛みをこらえ、なんとか立ち上がった。

 リブレはうれしげに、剣を構えた。


「そうこなくちゃね。さあ、いくよっ!」


 脚を踏み込んだリブレが、しゅんと消える。

 同時に、自分の背中に斬撃の痛みが走る。


 これで確定した。やはりリブレは、この壁を利用して攻撃しているのだ。

 ハヤトは振り返り、剣を振りかぶった。


 リブレは例のごとく、瞬時に背後の壁を蹴って飛ぶ。

 すぐにつき当たった壁を再び蹴り飛ばして方向を変えると、ハヤトの後頭部へと向かった。


 だがハヤトは、そこで剣を逆手に持ちかえ、地面を強く突いた。


「この床を、『破壊』する!」

「なっ!?」


 リブレが声をあげる。

 「蒼きつるぎ」が「ウォール」を破壊し、床が崩壊した。

 ハヤトを狙っていたリブレは、勢いを抑えられずに「キューブ」の部屋から飛び出してしまった。


 そしてリブレは見た。蒼き瞳が自分を見据え、落ちながらこちらに向かってくるところを。


「捕まえた!」


 ハヤトの「蒼きつるぎ」が、リブレの体をとらえた。

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