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イモータル・マインド  作者: んきゅ
第9話「海上決戦」
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その4

「うおおおっ!?」


 海上を飛び続けるリブレは、空に浮かぶ小さな船を見た。

 一人の女がすでに“魔力”を錬成し、詠唱に入っている。


「『ウォール』」


 リブレの背後に“魔力”の壁が生まれた。

 彼はそれに足をつき、空中で立ち止まった。


「ふうっ、助かったよレジーナ」


 レジーナは船を彼の近くに寄せ、リブレを乗せる。


「見事にぶっとばされましたわね。一緒にいたのはもしかしてアンバーかしら?」

「うん。めんどうなことになったね……でも『蒼きつるぎ』は発動したよ。やっぱりとんでもないや。剣がもたなかったよ」


 リブレは、鍔の部分から先がなくなった剣をぽいと捨てた。レジーナは一振りの剣を取り出してリブレに渡してやる。


「そっちはどうだい?」

「そろそろですわね」


 レジーナは船首を見る。



「例のやつ行くよ、ロバート!」

「おおっ!」


 ミランダが叫んだ。ロバートは彼女の背に“魔力”を込める。

 目の前には、いくつもの切り傷がついた、太い触手がうごめいている。

 ミランダの体の周りに“魔力”が集まってゆく。


「さあ、頼むぜ!」


 ロバートが背中をばしんとたたく。ミランダはそれと同時に突進を始める。


 触手が反応し、彼女へと向かう。

 ミランダは横へステップしてかわした。露出した肩をかすり、鮮血が飛び散ったが、彼女はがなり声をたてて槍を前面に向け、さらに加速する。


 そこに、もうひとつの触手が彼女の背後を襲う。


「ミラ――!」


 ロバートが叫ぶまもなく、触手がミランダに届く直前で外へとはじかれた。

 彼が魔法の飛んできた方向をみると、マストの見晴らし台にルーとマヤが立っていた。さっきのはルーの「エッジ」だろう。


 ミランダはさらに加速すると、一緒に戦ってくれている乗客たちを後目に、船のへりに足をかけ、海へと飛び出す。


 触手の先に、船室部分と同じくらい巨大なイカ型のモンスターがうごめいていた。


「あんたがクラーケンかい。お呼びじゃないんだよおっ!」


 ミランダの槍が、クラーケンの額へと突き刺さる。

 だが、槍はそのままクラーケンの頭の中へと入っていってしまった。


「なっ!?」


 同時に、彼女の体に触手が絡まり、上部へと突き上げられた。


「くそっ! 今の攻撃が効いてないのか!?」


 ロバートは矢をつがえて放つが、粘液でぬめった触手には刺さらない。


「おチビ、ミランダが捕まった! 『エッジ』を続けてくれ!」

「チビって言うななの!」


 ルーは「エッジ」を連射する。

 その姿を見ていて、マヤは思った。


 このままでは勝ちきれない。


 どうにかしなければ、と考えていると、こちらに黒い装束をまとった女が飛んできた。


「クラーケンに通常の攻撃を浴びせても無駄だ。粘膜で防がれる」


 アンバーは見晴らし台の縁に立って言った。


「勇者ハヤトの仲間だな。……彼と共に魔王軍と戦うつもりなら、相応の力を得ろ。彼の『蒼きつるぎ』に頼るな。そこで見ていろ」

「あ、あなたは……」


 マヤがあっけにとられているうちに、アンバーはへりを蹴って甲板へと降りた。着地と同時に、姿勢を低くして走り出す。


 腰から抜いた双剣に、“魔力”がこもる。


「『火遁・双炎牙そうえんが』」


 アンバーの双剣が炎に包まれた。 

 彼女はロバートをはじめ、戦っている人々を突き飛ばすようにして駆け、ミランダを掴む触手へと向かう。


 いくつかの触手がアンバーにおそいかかったが、彼女は床を蹴って宙返りし、両腕をないで双剣をふるった。


 じゅっ、という何かが焦げる音と共に、触手の切れ端がぼとりと落ちる。


 アンバーは迫り来る触手を踊るようにして斬り刻み、ミランダの拘束を解くと、彼女を足蹴にして飛んだ。

 下方にクラーケンの本体を確認すると、剣を交差させて“魔力”を練る。


「『氷遁・双凍牙そうとうが』」


 今度は双剣の刃が、ぴきぴきと凍りつき、長い太刀へと変わる。

 

「消えろ……!」


 アンバーが空中で一回転すると、クラーケンは二つの筋を残し、無惨に飛散した。

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