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イモータル・マインド  作者: んきゅ
第9話「海上決戦」
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その2

 リブレは、荒い息をはきながら壁にもたれる船長の肩に手をおいた。


「船長さん。さっきの、声をみんなに聞かせる魔法、もう一回やってくれませんか。ハヤトくんにもっといいたいことがあるんです」


 船長のバッシュは斬られた腹を手で抑えながら、顔を背けた。


「バカめが。た、たとえ“魔力”が錬成できる状態だったとしても……貴様のためになど使わん。まさか本当に魔王が復活していようとはな」


 リブレはちょっと困った表情をする。


「ベルスタでしっかり言ったって聞きましたけど? みんな、危機感が足りないんじゃないんですか」

「それは――きさまの方だ!」


 女性の声とともに、リブレの背後に向けて斬撃が飛ぶ。

 だが、彼はまたもや消えるようにして船長室の中に移動した。


 剣は空を斬った。


「ちいっ!」

「ああ、びっくりした。……あなたか」


 振り返ったリブレの表情から、少しだけ余裕が消えた。

 全身に黒い服をまとった女は、両の手に握った二本の短剣を彼に向ける。


「リブレ・ラーソン……。墜ちたものだな」

「いきなり斬りかかるなんてひどいよ、アンバーさん」


 アンバーと呼ばれた女は、額に汗をにじませながらリブレをにらみつけた。


「貴様、本当にあのリブレなのか……?」

「見りゃわかるでしょ。懐かしいね、みんなで旅をしていた頃を思い出すよ。アンバーさんも、最後までくればよかったのに」

「答えろ。ソルテスやグラン……お前たちは一体何をしようとしている」

「ええと、それを教えて僕が得することってあるのかな?」

「答えろと言っている!」


 アンバーが身を低くし、リブレに向かう。

 二人の剣がぶつかりあった。


「無駄だよ、アンバーさん。僕はあの頃の僕とは違う」


 リブレがふっと姿を消す。

 アンバーは前のめりによろける格好になる。

 同時に、背後からリブレの蹴りが炸裂したが、アンバーは跳躍しながら双剣を十字に重ね、それを防いだ。


「相変わらず器用だね。さすがはオータム出身だ」

「お前たちはあそこで……魔王の島で何を見た! なぜこんな事をする!」


 アンバーが再び斬りかかる。

 だが、リブレはそれを軽々とパリーすると、アンバーの腕を蹴り上げた。

 双剣の片割れが木製の天井に突き刺さった。


「もらった!」


 リブレが剣をなぐ。アンバーはもう片方の短剣を前に出そうとするが、間に合わない。


 しかしそこに、一人の少年が二人の間に飛び出すようにして現れ、リブレの斬撃を剣の峰で防いだ。


「うおおっ!」


 ハヤトは、そのままリブレを突き飛ばした。

 ふわりと後ろにとんで距離をとったリブレは、彼を見てにっこりした。


「きたね、ハヤトくん。初めまして」


 それを聞いて、固まっていたアンバーの顔つきが変わる。

 ハヤトは剣を正眼に構えた。


「ふざけたことしやがって。ビンスといいお前といい、魔王軍ってのは、おかしな奴しかいないのか?」

「いきなりきついな。ビンスみたいな奴と一緒にされるのは傷つくよ。あいつは正真正銘のくそったれなんだぜ」

「俺からすりゃお前も変わらねえ。お前たちはぶっ倒す。それだけだ」


「やめろ、新しい『蒼きつるぎ』の勇者」


 背後からの女の声に、ハヤトは後ろを振り返った。

 ハヤトは、思わず声を上げた。


「この男と戦うんじゃない。力を使うな」

「に……西山……先生……!?」


 アンバーの顔は、西山楓そっくりだった。

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