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イモータル・マインド  作者: んきゅ
第9話「海上決戦」
53/212

その1

 船長や船員を含め、おそらく乗船する全員が驚いた顔で固まっていた。

 クラーケンを撃退するはずだった魔大砲「グレイト・クルーズ」が、完全に破壊されてしまったのだから、当然のことではあった。


 男剣士は、ちょっと残念そうに言った。


「やっぱり必殺技の名前をつけるのは受けが悪いのかな。みなさん、期待を裏切ってしまってごめんなさい。でも僕ら、この船を沈めなきゃならないので」

「なにやってんだ、てめえっ!」


 数人の船員たちが一斉に彼に向かっていく。

 が、剣士は消えるようにして瞬時に彼らの背後へと移動した。

 すでに剣は抜かれており、血がべっとりとついている。


 船員たちは声をあげてその場に倒れた。


 もう一度、彼は姿を消した。


『うぐっ!』


 船長の声が辺りに響いた。ハヤトたちが視線をうつすと、船長室のデッキに男が移動していた。船長はその場に倒れている。


『きさま……一体、何を……』

『ははは』


 男の声が、船長の拡声魔法ごしに聞こえる。


『船員の人たちにもさっき言いましたけど……船を沈めるんですよ。僕はリブレ・ラーソン。魔王ソルテスの手下です。魔王軍って言ったほうがかっこいいかな』


 ハヤトは思わずバルコニーから身を乗り出した。マヤもそれに続くと、ミランダ、ロバートも騒ぎながら出てきた。


「魔王軍……! ビンスの仲間か!?」


 通常では聞き取れないくらい離れた場所にも関わらず、リブレはそれを聞いてハヤトを見た。


『そうだよ、ハヤト君。止めてみせろよ、「蒼きつるぎ」の勇者様』


 リブレは剣を払って血を飛ばすと、その場で二度、剣をふるった。

 太いマストに線が入り、まっぷたつに斬れる。

 マストが船べりを破壊しながら倒れ、一瞬にして辺りは人々の悲鳴に包まれた。


「なんなんだ、あいつは! 無茶苦茶だぜ!」


 ロバートが叫ぶ。

 ハヤトは剣を抜いた。


「みんな、クラーケンの方を頼む。あいつは俺がなんとかする」

「ハヤト、さっきのスピードを見たろ。たぶんあいつはビンス以上に手強いはずだよ。アタシら全員でかからないと」

「行ってくれ。クラーケンも相当やばいんだろ。ソルテスの手下は、俺がぶっ倒すから」


 ハヤトは、ミランダの言葉を制して言った。

 彼の表情は怒りに満ちていた。


 ミランダはそれを見て、頷いた。


「無理すんなよ、ハヤト。あいつを倒したらこっちも頼むよ」

「わかってる」

「ミランダ、そうと決まったら急ごう。見たところ戦える奴はこの船には少なそうだからな」


 ロバートとミランダは部屋に戻った。

 マヤも神妙そうにしていたが、ふと、辺りを見回す。


「そういえば、ルーちゃんは?」


 ハヤトも同じようにする。そういえば、掃除を始めてから一度も見ていない。


「あっ!」


 マヤが指をさした先には、マストの上部につけられた見晴らし台に寄りかかって眠るルーがいた。


「あいつ……どうしてあんなところで寝てるんだよ!」

「私はルーちゃんを回収してくるわ」

「わかった。気をつけろよ」

「ハヤト君も……さっきの話の続きは、あとで」

「ああっ!」


 二人は頷きあった。

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