表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イモータル・マインド  作者: んきゅ
第8話「船上の告白」
50/212

その4

 ハヤトは、船べりにひじをつけて海を眺めていた。

 太陽に照らされて暖色にきらめく水面が、ゆらゆらと揺れている。

 周りに島などは見えず、水平線はゆるやかな丸みを帯びている。

 圧巻の光景だった。


「きれいだなぁ……」


 彼は思わずつぶやいた。

 だがその直後、汚いモップが彼の頭にべたりと張り付いた。

 振り返ると、筋骨隆々の男が鬼の形相で立っていた。


「おい、何サボってんだ! さっさと掃除しろ、新入り!」


 結局、ハヤトは「蒼きつるぎ」を出すことができなかった。

 彼らは必死に受付の男にかけあい、結局パーティ一行は船員として働く、という条件付きで乗船することに成功した。


 ハヤトは仕方なく、デッキブラシを使って甲板の掃除を進めた。

 しばらくそうやっていると、先の船室のほうから聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「なあ、アタシの仕事やってくれたら、いいことしてやるよ」

「ほんとですか、姉御!」

「ほんとだよ。内容は、あとのお楽しみね。ま、言わなくてもわかるでしょ?」

「うおお、マジかよ!」


 船員たちのはしゃぐ声が響いた直後、ミランダが一人の男を引き連れて現れた。


「ハヤト。あんたの掃除、こいつが代わってくれることになったよ」


 ミランダは笑顔で言った。隣にはやたらとにやにやしている船員がいた。船員はハヤトのデッキブラシを奪いとるようにして掃除を始めた。


 ミランダは船員に「よろしく」と声をかけたあと、ハヤトを船室内へと連れて行った。


「チョロいもんさ。あいつら女に飢えてやがるから、ちょっとそれらしい事を言うだけでなんでも言うこと聞くからね。とりあえず、これでタダ乗り決定さ」

「だがミランダ、『感謝のビンタ』は彼らにとって『いいこと』でもなんでもないと思うぞ。また被害者が増えると思うと胸が痛むな」


 ロバートが現れた。

 どうやらこれは彼女の常套手段らしい。

 ミランダは舌打ちしてガンをとばす。


「ロバート、だったらあんただけ仕事に戻ってもらってもいいんだよ」

「じょ、冗談に決まってるだろ! 彼らには悪いがありがたいよ。なあハヤト君!?」

「え、ええ」


 ハヤトも思わず頷く。

 正直、掃除はイヤだった。


 ハヤトは窓から船を眺めた。

 いくつものマストが立てられている、かなり巨大な帆船である。現在いる船室自体も三階だ。一体何人が乗船しているのか、想像もつかない。

 これだけの人が乗れるというのに、一週間以上も待つ必要がある。それだけの影響力が、魔王ソルテスの登場にはあったわけだ。


 視線を移すと、バルコニーのところで外を見ているマヤを発見した。彼はミランダに礼をいい、そちらに向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ