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イモータル・マインド  作者: んきゅ
第8話「船上の告白」
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その3

「ふ、船が満席!?」


 ベルスタ王国は、アルゼスの港。

 たどり着いた船着き場で、思わずマヤが叫んだ。

 目の前の受付に座る男はぶすっとした表情で「それはもう聞き飽きた」と言ったふうに耳をふさいだ。


「魔王襲撃の一件以来、国を離れる人が増えてね。まあ、気持ちはわかるんだけどねえ。逃げてどうにかなるような話なのかねえ」

「わ、わたしたちは逃げる訳ではありません! 『蒼きつるぎ』の勇者をザイドに向かわせる任務を遂行中の騎士団員です。王から勅命状も預かっています」


 マヤはちょっと頬を膨らませながらベルスタ王の勅命状を見せた。男はそれを見て驚いた様子だった。


「おおっ、じゃああんたらの中に噂の『ドラゴン斬り』の勇者が?」


 男はパーティを見回す。


 金髪の少女。美人だがどうやら騎士団の人らしい。

 頭に奇妙なアクセサリーをつけた子ども。違うだろう。

 弓を持った青年。戦い慣れた雰囲気はあるが武器が剣ではない。

 剣を背負う少年。ちょっと頼りなげで、自分でも倒せてしまいそうだ。おそらく違う。

 ばいんばいんのお姉ちゃん。美女だ。武器は槍だが……この中で一番強そうだ。


 男はミランダに言った。


「あんたが勇者かい? すごいね、『蒼きつるぎ』を見せてくれよ」

「アタシじゃない。勇者はハヤトさ」


 男は、ミランダが指をさす頼りなげな少年に目を向ける。


「お前が? 冗談はよしてくれよ」


 さすがのハヤトも、これにはかちんと来た。


「だったら、証明してみせますよ」


 ハヤトは剣を抜いて力を込める。

 全員の視線が一点に注がれた。

 だが、いくらやっても「蒼きつるぎ」は現れない。

 彼は悔しさで頭を垂れた。

 また、これだ。


「くそっ! いつも肝心な時に!」

「はいはい、芝居はいいから大人しく次の便を待ちなよ。近頃は不定期だから、たぶん一週間くらい先になると思うけど、もっと待ってる人もいるんだからね」


 ハヤトたちは顔を見合わせた。

 一週間も待てるはずがない。

 なんとかして船に乗らなければ。


「ハ、ハヤト君。なんとか『蒼きつるぎ』出してよ」

「出そうとしても出ないから困ってるんじゃないか! みんなはいいよな、この気持ちがわからないんだから」

「ハヤト、落ち着くの」

「どうする、やっぱり鎧をひん剥くかい?」

「ミランダ、おそらくハヤト君はまたしてもドン引きだ。そろそろ彼のことは諦めるべきだろう」


 ロバートのあごに強烈なアッパーがとんだ。


「で、でも、たしか前はそれで出たんですよね、ミランダさん?」

「そうだよ。こないだのほこらの時だって、みんなで服を脱がそうと引っ張ってたら出たじゃないか」


 マヤの耳がちょっと赤くなる。


「だ、だったら……」

「ちょっと待て! どうしてそうなるんだ」

「んー? ハヤトが裸になると、『けん』が出るってことなの?」

「今までの話をまとめると、そうなるね」


 思わずハヤトは後ずさりする。

 三人がじりじりと近づいてくる。


「ハ、ハヤト君……その……言いにくいんだけど……」

「脱ぎな」

「脱ぐの!」

「いやああああ!」


 ハヤトは逃げ出した。

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