その1
ベルスタの街道沿いに馬車が止まっていた。
熊のような体躯に梟のような翼の生えた手を持つモンスター・オウルベア五頭が、それを取り囲むようにしている。
「それじゃあ、頼むわよ。タイミングをしっかりと合わせてね」
馬車の中から、女性の声が聞こえた。
「いくわよ。いちにの……」
「さんっ!」
大声とともに、馬車から飛び出してきたのはハヤトとルーの二人であった。
ルーはすでに練っていた“魔力”を地面へと向けた。
「『ガスト』なの!」
周囲にどんと突風が吹き、地面から土煙が上がる。オウルベアたちは驚いてうなり声をあげた。
ハヤトはその風にあおられつつもオウルベアの一匹に近づき、短いナイフを刺した。立て続けに、すぐ近くにいるもう一匹にも同様の攻撃を加える。
「いいぞ、マヤっ!」
次はマヤが飛び出す。彼女もまた、すでに“魔力”を練っていた。
「『ショック』!」
マヤの腕から青白い電撃が起こり、ニ体のオウルベアに刺さったナイフへと直撃した。
地鳴りとともに、オウルベアは真っ黒焦げになって倒れた。
ハヤトはそのままオウルベアたちを通りすぎるようにして走り、背中の剣を抜いた。
「さあ、モンスターども! かかってきやがれ」
ハヤトは気合いのかけ声をあげながら、剣をその場で振り回した。
残りのオウルベアたちの注目が一点に集まる。
待ってましたとばかりに、その背後から槍が現れ、一体の頭を貫いた。
槍はそのまま突き上げられるようにしてオウルベアの頭部を破壊する。
ミランダが歯を見せて笑った。
「よっしゃあっ! ロバート、しっかり狙うんだよ!」
「へいへい」
ロバートが剣、ではなく弓を構える。狙いを定め、二本の矢を同時に放つと、片方はオウルベアの足に、もう片方は頭を貫いた。
「っと、悪い! 一匹しくじった」
だが、彼が言い終わる前に、最後の一匹の腹に剣がぶすりと刺さった。
「かかってこいって、言ったじゃねえかよっ!」
ハヤトが腕に力を込めながら跳躍する。オウルベアはまっぷたつになりながら、はじけるようにして消し飛んだ。
こうしてオウルベアたちは全滅した。
「はっはー、大勝利!」
ミランダが拳を突き上げた。
ハヤトも剣を鞘に戻すと、彼女とハイタッチする。
「ルーも! ルーもやるの!」
ルーが近づいてくるので、ハヤトはかがんで手を合わせてやった。
流れで、歩いてきたロバートが手を出す。ばしんと手をたたく。
最後に、マヤがちょっと恥ずかしげに近づいてきた。
「や、やったね……」
ハヤトは笑顔で手を彼女にかざした。
「ああ!」
二人は手のひらを打った。