その7
マヤは、ルーと共にドールとの戦いを続けていた。
「ルーちゃん、左!」
「はいなの!」
ルーの「エッジ」がドールを襲う。ドールは左に逸れてかわしたが、ドレスの右腕部分が吹き飛んだ。すぐ先には、すでにマヤが剣を構えている。
「もらった!」
だが、その時。
ドールがもう一体、背後に現れた。
「危ない!」
ドールの攻撃は、走り込んできていたロバートによって防がれた。
「マヤちゃんが狙われてるぞ! チビ、魔法を撃ちまくれ!」
「わ、わかってるの……!」
だが、ルーは荒い息を吐き、耳もぺたんと折れてしまっていた。彼女は“魔力”の使いすぎで消耗しきっていた。
ドールの一体は、そのルーを蹴り飛ばし、もう一体はロバートにのしかかって彼を地面に叩き伏せた。
三体目のドールが、その手に“魔力”をしたため、残されたマヤを襲う。
「マヤ!」
遠目からハヤトが走ってくる。マヤは気丈にも、剣を構えて“魔力”を練った。
「ベルスタ騎士団は、第四師団長マヤ・グリーン! 私は、逃げも隠れもしないっ!」
ハヤトは走った。マヤに向かって。
このドールは強すぎる。マヤひとりに勝てる相手ではない。
可能性があるとすれば……「蒼きつるぎ」。
これしかない。今、出さねばいつ出すのだ。
「剣よ! 力を……貸せっ!」
ハヤトは剣を前方に出した。
「蒼きつるぎ」が発動すれば、いつものように、こんな奴らは倒せる。
マヤも守れる。
だから出ろ、さっさと出てこい。
蒼きつるぎよ!
どん、と空気が破裂する音と共に、ドールの一撃がマヤの胸部をとらえた。