その6
「ハヤト君は仲間思いなんだねえ。彼女とはまだ、出会って一週間経ったかどうか、くらいでしょ? ずいぶんとまあ、熱をあげてるんだね。もしかして、その子を奴隷にでもしたのかい?」
ビンスの一言に、ハヤトが激昂する。
「何が奴隷だ! てめえの趣味と一緒にするんじゃねえ! ルー! マヤの補助を頼む!」
「わかったの!」
ハヤトはビンスの元へと直接攻撃しにかかる。
しかし、ビンスの体の周りには「障壁」が敷かれており、剣は彼の目の前ではじかれた。
「ルーはな、やりたくもないことをずっとやらされてたんだ!」
「へえ。今の君みたいにかい?」
「ああ、まあな! だから助けた!」
ハヤトは攻撃を続ける。ビンスは涼しい顔をして、彼が必死に剣をふるうのを見ている。
「やりたくもないのに、どうしてそう必死になるんだい?」
「ソルテス……ユイに会って帰るためだ! もうこんな風に、訳のわからないまま戦うのは勘弁なんだよ!」
「ははっ! 勇者のせりふだとは思えないな」
「黙れ、お前に何がわかる!」
ハヤトが振りかぶってビンスの頭に向かって剣をたたきつける。
びし、と音がして障壁が少しばかり壊れた。
ビンスはそれを見て表情を変えた。
「こんな障壁がなんだ。無理矢理こじあけて、お前をぶっとばしてでも、ユイのことを聞き出してやる」
「……君、少し暑苦しいぜ」
ビンスは衝撃波を撃とうとしたが、その前にもう一撃、ハヤトの剣が障壁にぶつかった。今度は障壁全体にひびが入る。
「なにっ……! 僕の障壁が!?」
「やあああああっ!」
その時、ハヤトの背後にドールが現れ、彼の首を絞めた。ビンスは後ずさりする。
「驚いたね、ハヤト。君はどうやら本当にソルテスちゃんが言っていた通りの勇者らしい。だが!」
ビンスは腕をぐっと握って掲げた。
ハヤトの首を絞めるドールが、さらにその力を強めた。
「君みたいな魔法の初心者に、この大魔術師が負けるわけにはいかないね」
だがその時、ドールが勢いよく吹き飛んだ。
解放されたハヤトが見ると、ミランダが仁王立ちしていた。
「へっ、ハヤト! 濡れたぜ、今の言葉!」
ミランダは走ってドールにもう一度体当たりをかます。
「もう『蒼きつるぎ』なんてなくても、アタシはあんたに惚れたよ! 一生離さない! だからさっさと、そのバカをぶっとばしちまいな!」
「おおっ!」
ハヤトはビンスのもとへと走る。
だがビンスは、不適な笑みを浮かべた。
「ハヤト。君が情に厚い熱血野郎なのはよーくわかった。障壁を壊される前に、『蒼きつるぎ』だけ見せてもらうことにするよ。では……金髪の彼女にご注目」
ハヤトは、思わず後ろを振り返る。
「マヤ!」
ドールが、マヤに襲いかかろうとしていた。