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イモータル・マインド  作者: んきゅ
第6話「魔術師ビンスとファロウのほこら」
36/212

その4

「ビンスッ!」


 ミランダが叫んだ。

 部屋で待っていた男・ビンスは芝居がかった動作で彼女に手をひろげた。


「ああ、会いたかったよミランダ、ついでにロバート! 君たちは変わらないね。元気そうで何よりだよ!」

「ついでは余計だ、ビンス。あのふざけた障壁とこの洞窟は、お前の仕業か。一体何が目的だ」


 ロバートが剣を抜いた。

 ビンスはにっこりと笑って頭に手をつけた。


「おいおい、五日ぶりの再開だっていうのに、ずいぶんじゃないか。待ってくれよ。この洞窟は僕がやったんじゃない。友人の君たちに疑われるなんて、とても悲しいよ」


「ソルテスか」


 話に入ってきたのはハヤトである。すでに「蒼きつるぎ」のオーラは消えている。


「これをやったのは……ソルテスか!?」


 ビンスは彼を見て片眉をあげた。


「きみがハヤトだね。新しい『蒼きつるぎ』の勇者」

「答えろよ。お前はソルテスとつながりがあるのか?」

「君もせっかちさんのようだねえ。そんなに生き急ぐと、寿命が縮まるぜ?」

「答えろっ!」


 ハヤトは剣を鞘ばしらせ、ビンスに飛びかかった。

 ビンスは斬撃をひらりとかわし、ハヤトの胸部分に手を添えると、“魔力”で衝撃波を起こした。

 ハヤトは壁に叩きつけられた。


「ハヤト君!」

「おやおや……ハヤト。君ってば、動きがまるで素人じゃないか。“魔力”もからっきしだ。これじゃあ、『蒼きつるぎ』はまだ未完成かな」

「ビンス、てめええ!」


 今度はミランダが襲いかかったが、ほとんど同じようにして逆側の壁に吹き飛ばされた。


「ぐう……ビンス!」

「うーん、相変わらずいい声だ。ではそろそろ、説明してあげよう。洞窟は違うが、あの障壁は僕が作った。友人の君たちを巻き込まないようにするためだ」

「けっ、なにが友人だ。たった数ヶ月、一緒に傭兵をやっただけだろ」

「その数ヶ月がいかに、僕の心に花を咲かせてくれたことか! 本来の目的を忘れそうになるくらい、君たちといた期間は楽しかったよ。でも、それももう終わりだ。新しい『蒼きつるぎ』の勇者が現れたからね。ハヤト……僕は君を待っていた」


 マヤに抱えられて立ち上がったハヤトがビンスをにらみつける。


「どういうことだ」

「僕は魔王ソルテスのしもべ、ビンス・マクブライト。以後、お見知りおきを」


 ハヤトはつばを飲み込んだ。

 ソルテスの、しもべ。

 つまり……ユイと直接繋がる人物だ。


「ソルテス……ユイに、ユイに会わせろ! あいつは一体何を考えてる。どうして俺をこんな世界に送った! 『蒼きつるぎ』ってのはなんなんだ!」

「おうおうおう。ハヤト、ハヤト。一体いくつ質問するんだ? 僕が全知全能の神だとでも思っているのか? 光栄だがそうじゃない。僕は魔王の手下だ。勇者と戦うのが当然だろう? さあ、『蒼きつるぎ』を出しなよ」

「なめやがって、言われなくても出してやる! 剣よ!」


 ハヤトは剣を掲げたが、「蒼きつるぎ」は発動しない。彼は奥歯をぎりとならして地団駄を踏んだ。


「くそ! またかよッ!」


 ビンスはそれを見てにやりと笑った。


「どうやらまだ制御しきれていないようだね。でも仕事だからね。なんとしても見せてもらうよ」


 ビンスは“魔力”を練って、地面をたたいた。

 すると、地面がうねうねと動きだし、突き上がるようにして三体の人形が現れた。人間にそっくりだが、顔は何も描かれておらず不気味である。三体とも、きらびやかなドレスをまとっている。


「さあ、『ドール』のみんな。この人たちと遊んであげなさい。ハヤト君以外は、殺してしまってもいいからね」


 ビンスが指をはじくと、「ドール」と呼ばれた人形が動き出す。一体はミランダのほうへ、もう一体はルーとロバートへ、最後の一体は、ハヤトとマヤへと向かった。

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