その2
「アタシにまかせな!」
ミランダは槍をぶんと回すと、地を蹴って駆けた。
空中を飛ぶコウモリのようなモンスター、バットは数匹で抵抗しようとしたが、槍は正確にその体を貫いた。
「す、すげぇな、ミランダさん」
ハヤトは圧倒されっぱなしだった。洞窟に入ってからのエンカウントはすべて、この一連の流れだけで終わっていた。
ミランダは自慢げに笑いながら武器を背にかけた。
「へへっ、ハヤト。惚れたかい?」
「ミランダ、残念だがハヤト君は、お前の常人離れした馬鹿力に引いているぞ」
「余計なこと言うんじゃないよ!」
ミランダはロバートの冷静なつっこみに、強烈なラリアットで返事した。
洞窟の中は、城のような外観とは違って少し狭苦しい。しめった土のにおいが充満している。
だが、そこかしこがうすく光っており、洞窟というよりは、月明かりに照らされる夜の街道のようだった。
マヤが辺りを見回した。
「なんだか、ちょっとふしぎな感じね。ロバートさん。ここはもともと、こういう場所なんですか?」
ロバートは首筋を抑えながら立ち上がった。
「いてて……いや、前は真っ暗で狭い洞窟だった。もう二十分は歩いてるだろう? はっきり言って別物だよ。一体なにがどうなってるのやら、だ」
「ここ、“魔力”がすごいの」
ルーがつぶやく。耳が色んな場所に向かってぴこぴこ動いている。
「ちょっと、ハヤトが『けん』を出す時と似てるの。きっとこれを作った人はすごい“魔力”の持ち主なの」
ハヤトは地面を見た。
確かに、「蒼きつるぎ」の輝きと少し似ている気がする。
やはり、ユイのしわざではないだろうか。
「“魔力”ねぇ。じゃあやっぱりビンスだね」
ミランダが言った。
「どういうつもりなのかは知らないけど、アタシをだましておいて、ただで済むと思ってたら大間違いさ。さあみんな、行くよ!」
ハヤトは思わず目元をつねった。
果たしてユイなのか、そのビンスという男なのか。はやくはっきりしてほしい。
そして、できればユイであって欲しい。……とにかく会って、話がしたい。
この世界や「蒼きつるぎ」のことについて、少しはわかるかもしれない。そう思うと彼の気持ちははやるばかりだった。
「ミランダさんの言うとおりだ。こんな洞窟、さっさと攻略しちまおうぜ」
駆け足ぎみに歩いていくハヤトを、マヤが心配そうに見つめていた。