幕間「ルー、マヤと子作りする!?」
「あぁん……うん……はん……」
その夜、寝転がった状態のまま、ルー・アビントンは硬直していた。
目の前では、自分を掴みながら悶えるマヤが眠っている。
ルーはしばし口を三角にして絶句していたが、やがて体をよじって脱出を試みた。
しかし、マヤは余計強く、ルーを抱きしめた。
マヤの顔が接近する。表情は苦悶に満ちており、唇が濡れていた。
ルーの頭部分についた耳は、大きく逆立った。
ルーは、祖母の言葉を思い出していた。
寝ころびながら抱きしめあう。
それは子作りの第一歩だと。
「子、子作り……?」
ルーは、思わずつぶやいた。
そうとしか思えない。マヤが自分と子作りを始めようとしている。
しかし、ルーの本来のターゲットは、たき火の横で馬車に寄りかかってうとうとしているハヤトであり、マヤではない。
「マ、マヤ! 違うの。早まっちゃいけないの! ルーはハヤトと……」
しかし、マヤは彼女をより強く引き寄せた。
「ふおおおおっ!」
マヤの胸がぎゅぎゅぎゅ、と顔面にぶち当たる。
ハヤトを呼ぼうとしても、声すら出せない。
たき火の向こうでは動物のうなり声のようないびきが聞こえる。
きっとミランダだろう。ロバートも近くで眠っているはずだ。
このままでは子作りが始まってしまう。
なんとかしなければ。
とりあえず、マヤの手から離れなければならない。
ルーは、再び祖母の話を思い出した。
望まぬ子作りに巻き込まれそうになった際には、相手の股間にある棒をつぶすつもりで強く握ればよい。
ルーは手をのばして、マヤの股にあるはずの棒を探す。
ない。
(ど、どうすればいいの……)
ルーは恐怖した。そういえば自分にも棒はない。子作りの際に出てくるものだと思っていたが、違うようだ。
だが、ルーは祖母の言葉を信じたかった。
棒を必死に探し続け、マヤの体を手で探る。
(ぐぬぬ……どこ……? どこなの……?)
「うんっ……んんっ……そこはっ……!」
マヤがぴくぴくと悶える。
彼女の柔らかい胸がさらにルーの顔面を強く押すので、ルーはもう片方の手でそれを思い切り押し返す。
「あっ……ああっ……!」
マヤがさらに強く反応して、少し手をゆるめた。
ルーはこれだ! とばかりに胸を強く掴んだ。
「んぐっ……はあっ……」
マヤの息が荒くなる。
ルーは必死に胸を掴んでは離し、を繰り返す。
だがその時、彼女の体が突如として宙に浮いた。
「……おチビ、さっきからごそごそとうるさいぞ。遊んでないで早く寝ろ。明日にはファロウに着くぞ……ふぁ」
彼女のフードを掴んだのはロバートだった。目が半開きだ。
「違うの。マヤが……マヤがルーと子作りしようとしたの」
「寝ぼけてるのか? ほら、子どもはさっさと寝ろ」
ロバートはルーをたき火の近くまで運び、布団をしいてやった。
ルーは、そこではっと思い出した。
「そういえば……胸……胸が膨らんでたの。マヤはルーと同じメスだったの……心配して損したの」
ロバートはすでに自分のふとんをかけて眠りこけていた。
一方、悶えたままのマヤは、ごろごろと転がって、こくりこくりと頭を揺らしていたハヤトにのしかかった。
「う、うわっ!?」
驚いて目覚めたハヤトは、すぐにルーと同じような表情で硬直した。
マヤの服がはだけ、ほとんど全裸に近い状態だったからだ。
ほどなく、マヤの目が開く。
沈黙。
ハヤトはおそるおそる言った。
「い、いやあ、何度見てもいいおっぱ」
マヤの悲鳴と電撃魔法が夜空に轟いた。
第6話は次回からです。