その2
「生きてるか、ガキ?」
ルーを掴んだ女が、もう一度言った。アップにし、外にはねた銀色のくせ毛と、たれた目が特徴的だ。体つきはがっしりとしていながらも突き出る場所はやたらと突き出ており、それを強調するかのように露出度の高い服を着ている。背には長い槍を携えていた。
隣にいた、短髪の青年が彼女の肩をつかんだ。服装は剣士風で、女と同じく背が高い。
「ミランダ、初めて見た子にガキはないだろう」
「うるせえぞロバート。ガキはガキだろうが」
「……あのー……」
ハヤトは恐る恐る近づいた。ロバートと呼ばれた男はともかく、ミランダと呼ばれた女のほうは、彼にとって友達になれそうな人種ではなさそうだったからだ。
「あん?」
ミランダはドスの利いた口調でハヤトをじろりと見たが、その瞬間、ぴたりと止まって、ルーのフードから手をはなした。
ハヤトは頭を下げた。
「え、えーと……すみませんでした。ほら、ルー。お姉ちゃんに謝ろう」
ハヤトはルーを起こした。彼女はまだ混乱している風だったが、ハヤトにもう一度言われ、恥ずかしげにこうべを垂れた。
「ご、ご、ごめんなさいなの……」
ロバートが笑顔でルーの頭に手をやった。
「いいんだよ、こっちも悪かった。なあミランダ?」
「お、おう」
ミランダはこくりと頷いた。ロバートは少し意外そうな表情で彼女を見たが、ハヤトたちに向き直った。
「それより、聞こえてしまったのだが……君たちはファロウを目指しているようだな?」
「ええ」
「その様子だと知らないみたいだな。今、あの村には行けないぞ」
ハヤトとマヤは顔を見合わせた。