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イモータル・マインド  作者: んきゅ
エピローグ「イモータル・マインド」
209/212

その1

 終業のチャイムが鳴った。


「今日の部分は来週のテストに出るからな。心しておけ」


 教師は教科書を教壇に叩きながら言った。彼女の視線は、右端の席へと注がれた。


「おい、聞いているのか」


 教卓に突っ伏している青年に、その様子はない。教師は、ため息をついて頭をかいた。


「まったく、しょうがない奴だ。まあいい。ホームルームは省略。みんな気をつけて帰るように」


 教師が教室から出て行き、生徒たちは帰り支度を始める。青年はようやくのびをして起き出すと、かばんに教科書類を詰め始めた。彼は忘れ物がないことを確認し、席を立った。


「ちょっと待ちな」


 そこに、ぬっと一人の女子生徒が現れた。身長は青年とほぼ同じ。気の強そうな垂れ目が、青年に批難の目を向けていた。

 青年は、けだるそうに言った。


「俺、もう帰るんだけど。何か用か」


 彼女はそれを聞くや否や、床を蹴って飛び上がり、青年にドロップキックを見舞った。


「帰るんだけど、じゃない! あんた、また部活サボる気かい!」


 青年はずっこけたまま言った。


「またそれか。俺はもうやらないって……」

「ふざけんな!」


 彼女は青年の言葉を遮りながら、その頬に拳を浴びせた。


「あんたが来なきゃどうにもならないんだよ! いいから、さっさと来な、ロバートッ!」

「殴るこたあねえだろ!?」

「ホラ、早くする!」

「仕方ないな。今日だけだぞミランダ」


 青年・ロバートは仕方なく、同じクラスのミランダに連れられて教室を出た。


 二人が廊下に出ると、一人の男が目の前に立っていた。


「やあ、二人とも。奇遇だねえ」


 男はさわやかに言ったが、ミランダはそれを無視して歩いていく。


「え、ちょっと。ガン無視!? 今、僕、確かに話しかけたよね!?」


 ロバートは彼を笑った。


「お前も懲りないなあ、ビンス。ミランダは今、部活に燃えてるから無駄だって。なあ、暇なら今からゲーセン行かないか?」

「悪くないね。ミランダにもシカトされたことだし、一緒にクイズゲームでもしようか。一つの席に座って、二人で答えを探そう」

「カップルか」

「じゃあ君が格ゲーで対戦するのを後ろから応援するよ」

「カップルか!」

「じゃあクレーンゲームでぬいぐるみ取ってくれよ」

「カップルかよ!」

「かわいいクマさんのやつね。同じ奴を二つ取って分けよう」

「こいつ気持ち悪い!」


 たかたかたか、と廊下を走る音が聞こえたあと、ビンスはミランダに蹴りとばされた。


「いつまでやってんだ! あんたも部活に来るんだよ、ビンス!」

「やっぱり、そうなる?」


 三人が一階に降りると、二人の少女がそこに現れた。


「あっ、お姉ちゃん!」

「ようコリン」


 コリンは笑顔でロバートを見やる。


「ロバート先輩、今日は捕まえられたんだね」

「まあな。それで、この子は?」


 コリンは上背の高い少女を前に押しやった。


「前に話した、同じクラスのシェリル。部活に入ってくれるってさ」

「えっ、マジで!?」


 ミランダはシェリルに大声で聞いた。

 周囲の視線を集めてしまって、シェリルは大いに慌てていたが、恥ずかしげに口を開いた。


「は……はい。兄に話したら『ミランダの頼みなら入ってやれ』と言われて……」

「あ、そっか。ロック先生の妹さんなんだよね。私はあの人に育てられたようなもんなんだ。あとでよろしく言っておいて。これから、よろしく」

「はい!」


 ロバートとビンスは、彼女をしげしげと眺めている。


「おっぱいでかいね」

「だな、コリンちゃんと同学年とは思えん。あの子はほとんどまな板みたいなもんだからな……どうしてこんな悲しい違いが生まれてしまうのか、不思議でならない」

「ミランダお姉ちゃん。あとでこの二人ちょっと貸して」

「コリン、その時はアタシも手伝うから言いな」


 五人は体育館に向かった。

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