表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イモータル・マインド  作者: んきゅ
第4話「ケモ耳少女は子作りしたいの」
20/212

その2

「んっ……んんっ……」


 深夜。森の一角に作ったキャンプのたき火を見ながら、ハヤトはため息をついた。


「うっ、始まったか」


 彼は今夜も眠れないでいた。原因はただひとつ。


「んっ……んぐっ……あぅぅ……はんっ……」


 隣でもだえるような声を上げて眠るマヤである。

 どうやら彼女の癖らしい。

 そして寝相も悪い。彼女は眠っていると時折もぞもぞと動き出し、何かに掴まろうとする。

 ハヤトは毎晩捕まらないように、遠目の場所に毛布を敷いているのだが、なぜかいつの間にかその場所まで転がってくるのである。


「あ……あぁん……」


 色っぽい声とともに、背中にひしと抱きつかれてハヤトはびくりとした。彼女はがっちりと彼の体をホールドしていた。


「んっ……はぁっ……」


 ちょっと苦しげな吐息が漏れる。ハヤトの顔はみるみるうちに赤くなり、完全に硬直してしまった。

 年頃の女の子が、それも森野真矢にそっくりな彼女が、目の前で自分に抱きついている。しかも、背中に柔らかいものがふたつ、当たっている。ぷにぷにである。出会った時の感触を思い出す。

 ハヤトはふと、このまま彼女を……と衝動にかられそうになったが、ぶんぶんと頭を振った。

 こんなんじゃ、眠れるわけがない。


 相変わらずもだえ続けるマヤに毛布を掴ませ、馬車の御者席に座ったハヤトは、彼女の顔をみた。

 やはり、髪と目の色以外は森野真矢にうり二つである。性格や言動も似ている気がする。

 仮に自分がマヤ・グリーンに学校で出会い、剣道で勝ったとしたら、あの真矢みたいになるのだろうか?

 不思議な感覚であった。今となっては元の世界のことを思い出せるきっかけが、彼女の顔くらいしかない。

 でも、どうしてこんなことが起こるのだろう。


 ふと、マヤが寝返りをうった。

 ハヤトは一度それをちらりと見たあと、空を見上げたが、ものすごいスピードで二度見した。


 マヤの胸の部分が、もぞもぞと動いている。

 女性の胸ってそんな機能がついていたのか!?

 ハヤトはまだ知る由もない女体の神秘にあたふたしたが、その原因はすぐに判明した。


 上着の下部分から、小さな袋が現れた。

 袋はふわふわとぎこちなく浮かんで、マヤの顔を通って森の中へと消えていく。

 

「な、なんだ?」


 ハヤトが思わず声を上げると、がさりという音とともに、袋が落ちた。

 金属製の硬貨が散らばった。袋はマヤの財布のようだ。


 しばらくの沈黙のあと、袋はまた、何事もなかったかのように浮かびだす。


「お、おいおい。どこ行くんだよ。この世界じゃ、財布が意志を持ってるのか?」


 また、奥からがさりと音がした。ハヤトが見ると、そこには子どもの狼がいた。


 沈黙。

 しかし、袋が狼の方へ向かっていくのを見て、ようやくハヤトも気がついた。


「お前さ……もしかして、財布を盗もうとしてないか?」


 狼はかなりあからさまに体をはねさせて狼狽したが、時すでに遅し。浮いてきた財布をぱくりとくわえると、背を向けて一目散に駆けだした。


「あっ、テメーやっぱり! 待ちやがれっ!」


 ハヤトは狼を追いかけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ