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イモータル・マインド  作者: んきゅ
第20話「戦いへの前奏曲」
187/212

その3

「魔大砲準備、全艦整いました」


 オペレーターの女の報告を受けたアンジェリーナは不敵に笑いながら、肘掛けに手をついた。


「いくら強固な障壁といえど、永遠に持つということはあるまい。猿どもにも合わせるように伝えよ。魔大砲、全砲門開け」


 アンジェリーナが手を挙げると、鳥を象る戦艦のくちばしが次々と開いてゆき、そこに“魔力”が収縮していく。

 かつてハヤトたちがザイドの船で見た大砲「グレイト・クルーズ」を遙かに凌ぐ“魔力”が、一点に集中していった。



「始まるわ。急ぎましょう」


 「翼」を開いたマヤが、自分の周囲に「ウォール」を精製する。

 続いてコリンが「糸」の能力で鎖を作り、彼女の体を縛り付ける。鎖は三本に分かれた。


「ミランダさん、あなたが先頭です」

「おう。マヤ、じゃまだったら振り落としてくれたっていいからな」

「ええ、そうします」

「いい返事だ」


 ミランダは笑いながら鎖を手に取り、マヤの「ウォール」に乗る。コリン、シェリルも続く。


「よし、頼む!」

「『ライトニングブースト』!」


 戦艦から、稲妻をまとったマヤたちが飛び出した。


「マジックワード『メルトナカノン』承認。行けます」

「よし。撃てえッ!」


 アンジェリーナの指示と同時に、くちばしの先端から勢いよく弾けるようにして、太い“魔力”の束が発射された。


「メルトナの艦隊に合わせろ! 『タウラキャノン』発射!」


 続いて、ベントナーの戦艦群からも同質のものが魔王の城に向けて照射された。周囲が“魔力”の青白い輝きであふれた。


 全方位から押し寄せる“魔力”の光線を見て、ソルテスは長いため息をついた。


「だから、嫌いなんだ……。あなたたちの運命は、もう変わらない。なにをしても無駄なの。私たちが決めた運命に、逆らわないで!」


 ソルテスの体が紅く輝き、幅広の大剣が彼女の眼前に具現化する。


「『紅きやいば』が命じる! 周辺“魔力”法則を『破壊』せよ!」


 ソルテスは剣を握り、ふわり、とその場で一度回転した。

 瞬間、城の周囲を囲う障壁が光り出し、光線を受け止め始めた。


「ソルテスが動き出しました! おそらく……」


 オペレーターが報告し終わる前に、アンジェリーナは立ち上がって叫んだ。


「構わん、このまま押し切るぞ! ありったけぶっぱなせっ! あの城を手に入れれば、タウラなど恐るるに足らん。世界は我らの物ぞ!」


 鋼鉄の鳥たちは、攻撃を続ける。


 だが城は、微動だにしない。

 前回の攻撃で少しばかり見せた、障壁のゆがみすら起こらない。

 アンジェリーナは拳を震わせた。


「なぜだ! なぜ動かん!」

「簡単なことだよ」


 アンジェリーナは、思わず後ずさった。

 自分の隣に、紅い髪の少女が立っていたのである。


「ソ、ソルテス!」

「アンジェリーナ・メルトナ。お前たちは勘違いしている。この世界の運命はもう、既に定められている。私たちに攻撃する意味は全くない」

「わけのわからぬことをっ!」


 アンジェリーナが魔法を撃とうと“魔力”を練った、その瞬間。

 彼女の腹を「紅きやいば」が貫いた。


「わからなくて、いいの」

「な……がっ……!」

「わからなくて、いいの。だから、そのまま死んでね」

「ソ、ソルテ……どうし」

「耳障りなんだよ、だまれ」


 ベントナーは、赤い飛行戦艦が爆発を起こしたのを見た。


「なんだっ!? なにがあった! 応答しろ、アンジー……」


 彼は、最後まで言えなかった。絶句した。

 遠目に見える飛空戦艦が、次々と爆発して落ちてゆく。

 百か二百か、三百か。艦隊が、消えてゆく。

 爆発が、だんだんとこちらに近づいてくる。


 小さな紅い輝きを伴って、近づいてくる。


「ま、まさか……。ここまで、力の差があるというのか」

「そうだよ、ベントナー王。でも、私は謝らない。だってあなたは、似ているだけで、けっきょくは『違う』から。ベントナー王には、全部壊してから、また会えるから、いいよね。だから、お前は壊れろ」


 ソルテスが、彼の頭をはねる。


「壊れろ、壊れろ、壊れろッ! 全部壊れてしまえッ!」


 少女は踊るように、剣を振るう。

 爆発、重なるように、また爆発。


 こうして、飛空艦隊は墜ちていった。

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