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イモータル・マインド  作者: んきゅ
第3話「ハヤトの決意」
18/212

その4(終)

 ハヤトは騎士団から支給された、革製の鎧に着替えた。パーカーなどは、捨ててしまった。


「なんで鋼鉄製にしないの? あっちの方が頑丈よ」

「あんなの、重すぎて着てられないって。これも十分頑丈だし、着ごこちもいいよ」


 ハヤトは自分の灰色の肩あてをこんこんとたたいた。

 本当は、鋼鉄製でもよかった。

 だが、この革の色がどことなく、剣道の防具を彷彿とさせたのだった。

 形は似ても似つかないが、そのくらいはあちらの世界の面影を残しておきたかった。


「じゃ、次はこれね」


 マヤは剣を何本か取り出した。

 ハヤトは、銀色のさやに納められた細身の剣を選んで背中にかけた。

 ずっしりと重かった。


「『蒼きつるぎ』が自由に出せない以上は、これで身を守ってね。どちらにせよ木の棒だとか、剣だとか、媒介が必要みたいだし」

「ああ」


 しばしの沈黙。


「あのさ」


 口火を切ったのはマヤだった。


「さっき、行くのを断ろうとしてたよね」

「……まあね」

「どうして、行こうと思ったの? なんだかあなたは、本当に私の知らないところから来たみたい。だってあまりにも、この世界のことを知らなさすぎるもの」

「ようやくわかってもらえた?」

「ええ。でも、どうして行くって決めたの?」


 ハヤトは背中から剣を引き抜いて、切っ先を空に向けた。


「だって、俺は勇者なんだろ? だったら、魔王を倒すしかないさ……魔王のところに、行かないと」

「……そっか。だったら、私も一緒に行くわ」

「えっ!?」


 驚くハヤトをよそに、マヤはにっこり笑った。


「だってあなたは、この世界のことをまるで知らないでしょう? ベルスタのほこらがあるファロウの村って、どこにあるかわかる?」

「いや、知らないけど……騎士団の仕事はいいの? そこそこ、偉い立場なんだろ」

「ああ。辞めたわ」

「えっ!?」

「フィリップ団長があんまり怒るから、最終的には休職兼、勇者の道案内ってことにしてくれたみたいだけどね。私、あなたの『蒼きつるぎ』を見た時にもう決めていたの。だから、あなたが拒否してもついていくからね」


 ハヤトは、手を差し出した。マヤは意外そうにした。


「拒否なんてしねえよ。俺だって、マヤについてきてもらいたいと思ってた。うれしいよ」


 マヤの顔が一気に紅潮した。


「よ、よくもまあ、そんな浮ついた恥ずかしいせりふが出てくるわね。その手には乗らないんだから!」


 ハヤトは首をひねる。マヤはかぶりをふってから、彼の手を取った。


「改めて自己紹介。私はマヤ。マヤ・グリーンよ」

「折笠ハヤトだ」

「オ、オリ……カ……サ……? ずいぶん個性的な名前ね」


 どうやら苗字のほうは世界観にそぐわないらしい。

 ハヤトは少し考えて、言った。


「あ、やっぱ今のなし。スナップだ。ハヤト・スナップ」


 マヤは少し不思議そうしながらも、ぎゅっと手を握った。


「よろしく、ハヤト・スナップ君」


 二人の旅が始まった。

【次回予告】

始まった旅。

少年は少しずつ世界へと溶け込んでゆく。

まだそれが何を意味するのかも知らずに。


次回「ケモ耳少女は子作りしたいの」

ご期待ください。

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