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イモータル・マインド  作者: んきゅ
第18話「勇者の旅路 明かされる真実」
171/212

その8

 わけが、わからない。

 全員がそんな顔をしていた。


 自分たちの目の前にいるのは、ほかでもない自分たち。

 それぞれ、衣服や髪の長さなどが微妙に異なっているものの、それは「そっくりさん」などと言う言葉では片づけられないほど、異質だった。


 その人間が放つ存在感というもの。

 それが、まるきり同じであった。

 まるで、鏡合わせにしたかのようにして、彼らは同時に存在していた。


「どういう……ことだ」


 先にこの場に降りた、白い扉のグラン・グリーンが言う。


「これは……!?」


 後から来た、黒い扉のグラン・グリーンが言う。


「僕たちだ……僕たちが、いる。それにアンバーさんも」

「何なんだ」

「訳がわかりませんね」


 お互い混乱していたが、一歩踏み出したのは二人のミハイル・テツナーであった。


「罠だ!」

「こいつらは幻影ッ! これは魔王の残した最後のトラップに違いねえ! 俺たちを混乱させるために、こんなものを作ったんだ! そうに決まっているッ!」


 二人は同調するように言った。

 白い扉のリブレが、ビンスにたずねる。


「できるの、そんなことが」

「……確かに幻術を使えば、できなくはありません。ただ、私たち全員が同じ光景を見ているのが不可解です。それに幻術をかけられているのでしたら、私の張っている障壁がとっくに反応を示しているはずです」

「細かいこと気にしてんじゃねえよビンス! こいつらは敵だ!」


 白い扉のミハイルが、その場を飛び出す。

 黒い扉のミハイルも対抗しようとしたが、それを黒のグランが止めた。彼の腕には、小さな電撃が火花のように散っている。


「やめろ、ミハイル。訳もわからずに戦ってしまうのは危険だ。それでも戦うというのなら……電撃を食らってもらうぞ」

「ちっ……うるせえな……うるせえが、お前の判断はいつも正しい」


 黒のミハイルは手をぱっと広げ、戦う意志がないことを示した。

 白のミハイルも、止まった。

 二人のグランの目が合う。


「お前たちはどこから来た」

「魔王の城からだ」

「名前は」

「グラン・グリーン」

「……信じがたいことだが、どうやらお前は、俺、ということになるらしいな」

「そうらしいね」


 奇妙な会話が続く。


「一体どうやってここまで来た?」

「魔王を倒した後、ここにいるソルテスの力が暴走して、強制的に連れて来られた。君達もか?」

「ああ。そっちのソルテスも、『蒼きつるぎ』を使うのか?」

「そうだ。俺たちは魔王を倒すために」


 会話が、そこで止まった。


 黒のグランが、そこで血を吐いたのである。


「なっ!?」


 場が凍り付く。

 彼は、膝をついてその場に倒れた。


 全員の視線が、一人の少女へと注がれる。


「ソルテス!?」


 白のソルテスは、ただそこに立っているだけだった。

 しかし腕に握られた「蒼きつるぎ」の刀身が伸び、対面する黒のグランの胸へと刺さっていた。

 彼女は、それを信じられない、といった様子で見ていた。


「えっ……」

「ソルテス、一体何をッ!?」

「罠だ! やっぱり、罠だったんだッ! 貴様等ッ、よくもグランをッ!」


 黒のソルテスが、「蒼きつるぎ」を呼び出す。

 呼応するようにして、全員が「ブレイク」能力を解放する。

 こうして、悲劇が始まった。


「ニセモノどもがああッ!」

「魔王の罠が作り出した幻術よ、消えろッ!」

「最後の最後で、ふざけた真似をッ!」



「やめろ……みんな……ソルテス……。戦っちゃいけない……。戦いは終わったはずなんだ……これ以上、『ブレイク』を使っちゃいけない……! 誰か、誰か止めてくれ……誰か……! 俺は、マヤの所に戻らなくちゃいけないんだ……! 父さんの電撃魔法の強さを、世に知らしめなくちゃならないんだ……! こんな、こんなところで、俺は終われないんだ……」


 倒れていた黒のグラン・グリーンは必死に言ったが、もう一人の自分が放った魔法の余波をくらい、そのまま絶命した。

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