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イモータル・マインド  作者: んきゅ
第18話「勇者の旅路 明かされる真実」
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その7

 扉の中に入った一行は、すぐに体の自由を取り戻した。


「なんだ……ここは」


 リブレが周囲を見回す。

 そこは、青白い“魔力”の渦のようなものが無数に並ぶ空間だった。

 見当もつかないほど広くも見えるが、一行は奇妙な息苦しさを覚えていた。

 どん、と言う音とともに、背後の扉が閉まる。

 ミハイルがすぐにそれを開けようと試みたが、びくともしない。


「くそっ! 閉じこめられたみたいだな」


 ビンスは手のひらに“魔力”の珠を作り、それを深刻そうに覗いている。隣にいたレジーナも、それを見てはっとした。


「なんですの、これは……!?」

「信じられません……この空間は全て、ソルテスの『蒼きつるぎ』と同質の“魔力”のようなもので構築されているようです。私たちの知る“魔力”法則で実現できるようなものじゃない。ここは一体……?」


 ビンスがソルテスを見やる。

 先ほどまでの輝きは消えていたが、息を荒らげている。

 グランが心配そうにその肩を掴む。


「大丈夫か、ソルテス?」

「うん……とりあえず収まったみたい。でも、胸騒ぎがする」

「どういうことだ?」

「わからないの……でも、ここにこれ以上いちゃいけない。そんな気がする……うっ!」

「ソルテス!」


 ソルテスが再び苦しみ出すと共に、先ほどの紅い輝きが彼女の体からほとばしる。

 グランがその体にふれようとしたその時、輝きが床へと移り、地を走っていった。


 輝きは彼らの元から百メートルほど先に集まると、長く帯状に広がる。

 そして彼らは見た。

 先ほど、自分たちが入ってきた際と同じ形状の扉が、そこから現れるところを。

 違っていたのは、色。

 扉は真っ黒だった。


 黒い扉が大きな音をたてて開かれる。

 光が漏れ、グランたちは目を腕で覆った。


「一体なんなんだ、この扉は!?」

「体が、勝手に!」


 誰かの声が聞こえる。

 何者かが、自分たちと同じように入ってきたのだ。


 どん、と扉が閉められる音が聞こえる。同時に視界が開けた。



 何人かの男女が、周囲を見渡していた。


「なんなんだ、ここは」


 金髪の魔術師風の男が、訝しげに上を見る。


「確かにさあ、僕ら、魔王を倒したよね……? もう、終わったんだよね?」


 気弱そうな剣士が、おびえている。


「るせえぞ、まだわかんねーだろうが! 魔王が死んだって魔族がいなくなるわけじゃねえんだぞ!」


 巨体を持つ男が、彼を一喝する。


「油断するな。誰かいるようだぞ。障壁を張れ」


 凛とした雰囲気の女が、クナイに手をかけた。


「みんな、アンバーさんの言う通りにして。『つるぎ』の力が妙な方向に暴走している。ここには何か……」


 最後に、黒い鎧を着た少女が、そこまで言い掛けて、やめた。





 全員が驚愕のあまり、動けないでいた。




「なんだよ……これ……」




 リブレだけが、静かに言った。


 勇者一行の前に現れたのは、勇者一行だった。

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