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イモータル・マインド  作者: んきゅ
第18話「勇者の旅路 明かされる真実」
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その6

 “魔力”の約八十パーセントを消費する、自身最大の技を放ったソルテスは、息を荒げながらも、なんとか意識を保っていた。

 そして、見た。上半身と下半身をばらけさせた魔王が、青い血にまみれて床にうずくまっているところを。


「はあ、はあ……」


 全員がしばらく、なにも言えなかった。

 ただ、その場に立っていた。

 だが視線だけは、憎き宿敵へと、自然に注がれていた。



 魔王が、真っ二つになって倒れている。

 動きすらしない。



「倒したぞ……」


 グラン・グリーンが、よろよろとその死骸へと、歩みよる。

 そして、声を絞り出すようにして叫んだ。


「倒した……倒したんだ……! あの魔王を……俺たちが! 俺たちが勝ったんだッ! うおおおおーーーっ!」


 グランが感情を爆発させるのを見て、それまで信じられないという顔をしていたリブレが、彼に抱き寄る。


「ちょっ……何すんだよ、リブレ!」

「ぼ、僕たちは……本当に、勝ったんだ! 夢じゃないよね!? つねってくれよ、グラン!」

「何言ってんだ、現実だ! おら!」

「いてててて! 強く引っ張りすぎだよ! でも、やったああ!」


 それを見て、ミハイルが声を上げる。


「よっしゃああーっ! やったぜ、俺たちが最強だーッ!」

 

 レジーナは、今にも力つきそうなビンスに向けて、回復魔法をかけた。彼女は目尻に涙を貯めている。


「ビンス、やりましたわ……! お姉さまの仇は、ぶじ……! あなたのおかげですわ」

「そうですか……。とうとう、戦いが終わったのですね」


 全員が歓喜の声を上げるなか、ソルテスだけが、魔王の死骸を見ていた。


「はあ、はあ……」


 自分の親を殺した、憎き敵。

 仲間を殺した、倒すべき相手。

 自分の、生きる目的。


 魔王が、朽ちてゆく。


 様々な想いが交錯し、彼女はその目から涙を一粒、ぽとりと落とした。


「終わった……。これで、全部終わったんだ」




 彼女が、そう言った瞬間の出来事だった。




 魔王と戦っていた部屋の奥から、強大な“魔力”を伴った衝撃が起こった。


 全員が、その瞬間に喜ぶのをやめた。

 やめざるを得なかった。


 その“魔力”量は、魔王のそれを遙かに凌駕していたのである。


「な、なに……?」


 ソルテスが言うと、もう一度衝撃が起こり、突風が吹いた。


 彼女の瞳が、紅く輝いてゆく。

 すぐにグランが駆け寄る。


「ソルテス!? 一体どうした!?」

「わ、わからないの! 急に……力がっ!」


 ソルテスの悲鳴と共に、彼女の体を紅い輝きが包んでゆく。


 ほぼ同時に、部屋の奥から同様の輝きを伴った巨大な板が現れた。

 冷たい鉛色をした板の中心に、一筋の線が引かれる。


 板は、両開きの扉となった。


「な、なんだ……? 魔王の残した、最後の切り札か……?」


 リブレがそう言うと同時に、足を一歩踏み出す。

 彼は、とたんに表情を変えた。


「なっ……足が、勝手に!?」

「向かっていく……!? なんですの、これはっ!」


 リブレ、レジーナ、ビンス、ミハイル、グラン。

 そして、紅い輝きを放つソルテス。


 全員が、引き寄せられるかのようにして、扉へと向かう。


「罠か!? 誰か動けないのかっ!」

「ダメです……! 止まらない! “魔力”を練ることすらできません!」


 扉は、それを歓迎するかのように、その堅そうな板をゆっくりと開いてゆく。


 それはまるで、運命かのごとく。

 勇者一行は、扉の中へと入っていった。 

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