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イモータル・マインド  作者: んきゅ
第3話「ハヤトの決意」
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その2

 隼人は目を覚ました。

 ベッドの上のようだ。ただ、この天井は初めて見る。

 唯はどこに言ったのだろう。


「兄さん……」


 近くから声が聞こえた。


「唯!?」


 隼人はがばりと起きあがった。……が、途中でそれを阻まれた。自分の腕に、誰かがからみついている。

 見てみると金髪の少女が、シャツ一枚で横に眠っていた。


「も、森野!?」


 いや、森野真矢ではない。マヤだ。

 あの夢のような世界に戻ってきたのだ。


「兄さん、いかないで……」


 マヤはひしと隼人の腕にだきついた。二の腕部分にとても柔らかいものが当たり、隼人は硬直する。シャツの襟元がよれて、白い肌がのぞいていた。


「兄さ……ん?」


 ふと、マヤの目がぱちりと開いた。

 二人の目があう。


 硬直。

 隼人はおそるおそる言った。


「お、おはようございま」


 悲鳴とともに、部屋中のものが飛んだ。


 

 隼人は、前日に起こった出来事を簡単にマヤから説明された。

 英雄だったソルテスが魔王として世界に宣戦布告したこと。

 そしてベルスタに住むほぼ全員が、「蒼きつるぎ」の勇者が、レッド・ドラゴンを斬るところを見たこと。


「覚えてるよ、そのくらいは。最後のドラゴンのときは、必死だったからぼんやりしてるけど」

「よし、とくに記憶に問題はないわね。あの後すぐに気を失っちゃったから、心配したわ。とにかく城まで来てちょうだい。ベルスタ王が会いたがっているわ」

「……」

「なに、なんで黙るの?」


 隼人は傷だらけの頬をさすった。


「あんなに寝相が悪いなら、どうして俺を自分の家に泊めたの? どこか別の場所に寝かせておけばよかったじゃん。ああ、いてぇ」


 マヤは突如として真っ赤になった。


「ち、違うんだからね! ヘンな想像しないで!……あなたをここに連れてきたのは、私だからね。気を失っている間は責任を取りたかったのよ。さあ、行きましょう」


 隼人たちは城へと向かい、歩いていった。

 外壁がなくなったベルスタの様子は、昨日までとはうってかわってしまっていた。

 通行人の数が多く、大きな荷物を積んだ馬車がいくつも通った。


「ベルスタが誇る外壁がなくなっちゃったからね。近辺に強いモンスターはいないけど、魔王の攻撃の標的にされちゃったわけだから、ここを離れようって考えるのも、無理ないわ」


 マヤがさびしげに言った。


「魔王復活の噂は、きっと今に世界中に広まる。たぶんそれが魔王のねらいよ。でも……今回はドラゴンを一刀両断にした『蒼きつるぎ』の勇者の話とセットだわ」

「お、俺か? 大丈夫かよ」


 マヤはほほえんで頷いた。


「何いってるの、自信持って。あなたが昨日やったことは、とてつもない快挙なのよ。魔王の目的は半分失敗したも同然なんだから」


 隼人は息をついて空を見上げた。

 同じなのは、この空の色だけだ。

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