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イモータル・マインド  作者: んきゅ
第17話「聖域の塔 運命のはじまり」
154/212

その3

 ミランダとコリンは、通路を駆けていた。

 分かれ道になっているところからリザードマンが現れるのを見て、ミランダが舌打ちする。


「任せて」


 後ろのコリンが、手に“魔力”を集めると、リザードマンの立っている場所周辺に彼女の「糸」の能力が発現し、敵を壁へと拘束した。


「よっしゃ! 急ぐよコリン!」

「わかってる」


 つい先ほどまでだらだらと歩いていた二人であったが、状況が変わった。

 自分たちが進む方角から、落雷のような音が聞こえたのだ。


「あれは、マヤが魔法をぶっぱなす時の音だよ! それもかなりの大技! きっとマヤが、魔王軍にかちあっちまったんだ!」


 マヤが誰といるのかはわからないが、ここに来る時の彼女はかなり憔悴していた。そこを魔王軍にねらわれたのかもしれない。

 一刻も早く、彼女と合流せねば。


 走っていくと、再び分かれ道が現れた。

 今度はT字路になっており、敵がいるかどうかの判断もつかない。


「二択は得意だよ! 右だ!」


 ミランダが右側に走り込む。

 敵はおらず、通路が続いていた。


「よし! このまま突っ走――」


 そこまで言ったところで、彼女の足が止まった。

 全力で後ろを走っていたコリンは、ミランダの背中にぶつかった。


「ちょっと!」


 抗議するコリンだったが、返事が返ってこない。

 代わりに、ミランダはコリンの手を掴んだ。


「やべええっ! 戻るぞお!」


 コリンは見た。自分たちが進もうとしていた道が、がらがらと崩れてきていた。

 壁が崩れた先には青空が広がり、下方にちらりと海のようなものが見えた。


 落ちたら、命はない。


 二人は全速力でさっきと別の道を走り抜ける。直後、道が崩れていく。

 先からリザードマンが三体ほど、見えてくる。

 ミランダは舌打ちした。


「あーもう、こう言うときに限って! コリン、さっきの奴出せ!」

「三体は無理! あと一体をなんとかして!」


 コリンが汗を流しながら指を動かすと、二体を壁に拘束する。

 残った一体はこちらに突進しようとしたが、ミランダのドロップキックがその顔をとらえた。


「お前らの見せ場はないッ!」


 着地と同時に、飛び出すようにしてダッシュを再開するミランダ。

 拘束された二体と、ミランダに蹴られた一体は、道の崩壊と共に地面へと投げ出されていった。


 二人は走る。とにかく走る。狂ったように前へ進んでいく。


 次に現れたのは十字路。

 だが、自分たちが走っている方向の道を除いて、道が崩れていくのが見える。


「このまま、まっすぐだ! 突っ走れ!」


 と、絶叫したミランダだったが、自分の目の前の道も、がらがらと崩れていくのを見てさらに大きな声を上げた。


「だあああああッ! どうすりゃいいんだよッ!」

「ミランダ、上ッ!」


 今度はコリンが叫ぶ。

 崩れた道のさらに上方に、階段が見える。

 届くかどうか、ぎりぎりの高さである。


「行くしかねえ! コリン、覚悟を決めろおッ!」

「とっくに、できてるッ!」


 女は、度胸だ。

 ミランダが地面をぐっとふみつけ、大きくジャンプする。ほぼ同時に、コリンも飛ぶ。


 彼女たちが走っていた道が、全て崩れた。

 ミランダは必死に、上方の階段に手をのばす。


 だが、届かない。


「ちっくしょっ……!」

「まだよ!」


 コリンが顔の前で、腕を交差させる。


「届けえッ!」


 彼女が腕を開くと、“魔力”の糸が連なり、鎖へと変わった。

 鎖は勢いよく階段の天井に突き刺さり、彼女らを上方へと導いた。



「はあ、はあ。死ぬかと思った……」


 階段に寝そべり、息も絶え絶えのミランダが言う。コリンも腰をおろして、呼吸を整えている。

 ミランダは起きあがって、コリンに手を差し出した。


「助かったぜ、コリン。……あんたさ、アタシの名前覚えてたんだな」

「あなたこそ」


 手をとる二人は小さく笑みを交わしたが、立ち上がると、すぐに顔つきを変えた。


「この階段……怪しいと思わないかい」

「ええ。最後の最後に、突然現れたように見えた。都合がよすぎる」

「罠かもしれないね……。ま、ビンスの奴に当たるんなら、それはそれでいいんだけどさ」


 二人が階段を登り切ると、開けた部屋に出た。

 周囲には扉が見える。ほかの通路からも来られる場所のようだ。

 空間は、やはり奇妙なほど広い。


「ビンス! いるなら、出てきやがれ!」


 ミランダが声を上げた瞬間、正面の扉が開いた。

 二人は、目を見開いた。


「たどり着いたか……。能力者二人なら、当然かもしれんがな」


 グラン・グリーンが、そこにはいた。

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