その6
ミランダ、コリンの両者が出口から消えたことを確認したハヤトが、声を上げる。
「……もしかして、うまく行ったのか?」
「そうみたい、ですね。何が原因なのか、わかりませんけど」
「“魔力”の相性なの」
ルーが言う。
「ミランダは“魔力”が薄いけど火、コリンは水なの。相性、最悪なの」
「要するに、相性の悪い二人だったらこの障壁を突破できるってことなのか?」
ロバートの問いかけにルーは首をふった。
「そういうことじゃないの。今いる七人を相性別に分けると、そうなるの。ロバートとルーは、木と風で、相性はまあまあなの。でも最高ではないの。ロバートの場合はシェリルの土と相性抜群なの。だから次は二人なの」
「ルー、説明がよくわからねえぞ」
「相殺、ですね」
シェリルが言うと、ルーは今度は頷いた。
「そうなの。ぶつけあうか、いっしょにして、しょーへきを元に戻すの」
「……つまり、それぞれの人間が持つ生まれつきの属性をかけ合わせて、障壁の歪みを矯正するわけですね。なるほど、それだったらつじつまが合いますね」
「シェリルはよくわかってるの!」
二人は頷きあっていたが、ハヤトたちにはさっぱりだった。
「でも、それだと一人ここに残ることにならないか?」
「心配ないの。ルーは風と相性のいい火と相性の悪い土を両方出せるの。二人とも光のハヤトとマヤが行ったあとで、ルーは一人で行くの」
「……大丈夫か? もしかして魔王軍の罠じゃないのか?」
「その話は、さっきしたばっかりなの。『俺たちは、進むしかない』って、ハヤトがかっこよく言ったばっかりなの」
ルーはにっこりと笑う。
ロバートはそれを見て、頷く。
「お前、こういう時は頼りになるよな」
「今更気づいても遅いの。ルーにはハヤトがいるの」
「わかってるって。よっしゃシェリルさん、そうと決まったら行こう。ミランダたちが待ってるぜ」
「は、はい」
シェリルは若干恥ずかしがりながらも、階段を登って消えていった。
それを確認してから、ハヤトとマヤが並ぶ。
「マヤ、大丈夫か?」
「ええ……」
マヤは力なく言った。ハヤトは、あえてそれ以上声をかけなかった。
「ルー、待ってるからな」
「うん、二人が行ったらすぐ行くの」
「ありがとよ。お前がこのパーティにいてくれて、助かった」
ルーは、それを聞いて真顔になった。
が、その後きゅうに顔を赤くした。
「は、はやく行くの」
ハヤトとマヤが姿を消したことを確認してから、ルーは、はあと息をついて、階段に足をかけた。
「さて、ここからどう出るのか、お手並み拝見ってところかしらね」
ルーは“魔力”を展開させながら、ドアへと入っていった。




