その11
「ルー、大丈夫か!?」
着地しながら、ハヤトが言う。
彼に抱き抱えられたルーは、なんだか眠たげだった。
「……ハヤト?」
「『ブレイク』したからって無茶するな! 相手は魔王軍だぞ」
「ルー、なにかしたの? ルーは寝てたの」
首をひねるハヤトだったが、着地をねらってモンスターたちが押し寄せて来た。
「ちいっ!」
ハヤトは「蒼きつるぎ」をひと薙ぎして、それらを消し飛ばす。
「とにかく、ルーはマヤを頼む。この先の突き当たりを右に行った民家の中だ。残りのモンスターとビンスは俺がやる」
「ハヤト、ひとりで大丈夫なの?」
その時、轟音と共に、大きな人型のモンスターが三体ほど現れた。
「だめだ、サイクロプスが三体集まっちゃ、何人いても止められねえ!」
おそらくこれまで一つ目の大型モンスター・サイクロプスと戦っていたであろう兵士たちが、その後方で騒いでいる。
ハヤトは身じろぎせず、ルーを立たせると、静かに言った。
「ひとりじゃないさ」
次の瞬間、彼の前に一人の少女が現れ、目の前で着地した。
少女……コリンは、両手をばっと開き、顔の前で腕をクロスさせた。
「通さない」
コリンの指先が、一瞬輝いた。
彼女はサイクロプスに向けて指をきりきりと動かす。
すると、周りの地面が線上にはじけてゆき、サイクロプスたちの動きが突然止まった。
三体のモンスターは、ずずずとコリンの正面に向かってひきずられてゆき、まるで何かで縛られたかのようにして、その体を押しつけあった。
「消えろ」
コリンが、腕を開く。
サイクロプスたちの体に、無数の筋が浮かんだかと思うと、一瞬にしてバラバラに散った。
ルーが思わず騒ぐ。
「すっ、すごいの! コリンも、『ぶれいく』したの!」
コリンは、少しだけ頷いた。
「魔法は嫌いだけど、これは気に入った。これがあれば、守れるから……」
「コリン、行こう。ビンスをその能力で捕まえられれば、情報が聞き出せるかもしれない。もうこれ以上、あいつらの好き勝手にはさせない!」
二人は走っていった。
ルーはそれを見送ったあと、首をひねった。
「ルー、どうして空を飛んでたんだろう?」




