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イモータル・マインド  作者: んきゅ
第15話「再会」
138/212

その10

 ドラゴンの上に戻ったビンスは、輝く“魔力”の玉を右の手のひらに作りだし、それをじっと見つめた。


「『ゼロ』のゆらぎが六回……こいつは思っていたよりも大きいな……ハヤトの成長率は僕らの予想より多少早いようだ……興味深い」


 ぶつぶつとつぶやきつつも、左手でドラゴンに“魔力”を送り込み、ビンスは街を飛ぶ。

 人々の叫び声や怒号が波のようになって、下方から押し寄せてくる。彼はえもいわれぬ興奮を覚えた。


 確認すべき勇者の仲間は、あとふたり。

 さっき見た金髪の少女に、小さな子どもだ。


 ハヤトと一緒にいるのだろうか。ならば、「ゆらぎ」の起こった方向に進めばよい。

 だが、その場にいないとすると面倒だ。またグランに小言を言われてしまう。

 この辺で切り上げて、適当に報告しておこうか……。


 そう考えた時、ザイド城の南西にある塔の頂上に、誰かが立っているのを見つけた。

 ビンスはそれを見て、小首をかしげた。


「あの子ども……」


 そこには、ルー・アビントンが佇んでいた。

 彼女は無表情で、こちらをただ見ている。


「なんだ? こちらに攻撃もせず、このパニック状態の街を救いもせず……一体何をやっている……?」


 ルーは、すっと左手を掲げた。

 直後、空に突風が起き、ドラゴンが少しばかり南に押される。


「どうやら大物狙いのようだな。おおかた風で流して、その先に罠でも張っているのだろう。悪いけどその手には……」


 ビンスが方向転換し、風に逆らってドラゴンを進ませる。

 ルーは、それを確認すると今度は右手を掲げた。


 ビンスの進む先に、小さな“魔力”の玉のようなものが無数に現れた。

 

「機雷……逆をついて来たか。やはりセンスは抜けているな。では、これはどうだ」


 ビンスが指示を出すと、ドラゴンの口がかぱりと開いた。


「さあ、でっかい火球がいくぞ。どうかわす?」

「その必要はない」


 背後からの声に、ビンスは目をかっと開いて振り返った。


 すぐ後ろに、ルーが立っていた。ビンスが確認すると、さっきまで彼女がいた塔には、もう誰もいなかった。

 さすがのビンスも、動揺を隠せなかった。


「なっ……! 移動魔法を使ったのか? 呪印で封じてあるはずだが」

「答える義務は、ないわね」

「バカな……貴様、何者だ」

「その質問にも……答える義務は、ないわね。邪魔だから、このドラゴンの首、もらうわよ」


 ルーはそう言うと、雑に手刀をうった。


 ドラゴンの首が、どっと吹き飛んだ。


「貴様……まさか……!」


 ゆっくりと降下を始めるドラゴンの背の上で、ビンスが叫ぶ。

 ルーは、右目を少しばかりうすくして、にたりと笑みをうかべた。


「あなたごときの想像力じゃ、答えにはたどり着けない。用事が終わったら、とっとと帰んなさいな」

「黙れ!」


 ビンスが空中で“魔力”の衝撃波を放つと、ルーの体はどんと吹き飛ばされた。


「ちっ……あの女、どこかで……」


 ビンスの思考は、そこで途切れた。


 投げ出されたルーの体を、蒼い閃光がキャッチしたのだ。

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