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イモータル・マインド  作者: んきゅ
第15話「再会」
134/212

その6

「ひるむな! 今こそかつての屈辱をはらす時! 一匹残らず殲滅せよ!」


 ザイド・スプリングを守護する兵士たちとモンスターたちとの戦いが始まる。

 大混乱に陥る街の中を、コリンは走っていた。


 彼女にはモンスターも、兵士たちも、街で騒ぐ人々も見えていなかった。


「どうして……!」


 彼女はかすれた声で言った。


「どうして、あなたたちが!」


 コリンは中庭で、確かに見た。

 ドラゴンを駆り、精霊の御神木を引き抜く、あの男を。



「持ってきたぞ」


 レッド・ドラゴンに乗るグラン・グリーンが、宙を旋回するドラゴン一行の元へと到着した。


 レジーナは身を乗り出し、御神木を確認する。


「さすが、仕事がお速いですわね」

「レジーナ……こんなにモンスターを召還する必要はなかったんじゃないのか?」


 グランが静かに言うと、レジーナは蔑むようにして彼を見返す。


「あら? ずいぶんお優しいのねえ、グラン君は。そんなくだらない質問、答えたくもありませんわ。そんな、くだらない質問!」

「……まあいい。おいビンス、勇者どもはいそうか」


 グランが視線を移す。別のドラゴンに乗るビンス・マクブライトが、“魔力”の球のようなものを見ていた。


「君の予測通り、どうやら来ているみたいだねえ。さっき、少しばかり『ゼロ』のゆらぎを確認したよ」

「勇者の『ゼロ』の段階は。あとそのうち何人が『ブレイク』したかわかるか」

「おいおいおいおい。僕は万能コンピュータじゃないんだぜ、勘弁しておくれよグラン君」

「さっさと答えろ」

「あくまで予測だけれど、『ゼロ』は少なくとも第五段階以上。『ブレイク』した人数まではわからないけれど……」


 ビンスは、グランの背後に向けびしっと指をさした。


「少なくとも、ひとり」


 グランが振り向くと、そこには金色の翼を生やしたマヤ・グリーンがいた。


 二人の、目が合った。


「兄さんッ!!」


 マヤが叫ぶ。彼女の胸の鼓動が高鳴る。

 久しぶりに見た兄は、信じられないほど変わっていなかった。

 思わず、涙さえ出てきそうだった。

 

 しかしグランは、少しばかり彼女を見てから、再びビンスに話しかけた。


「ビンス、この女の『ブレイク』はすでにレジーナが目視で観測している。問題は他の連中だ」


 マヤの表情が一瞬にして絶望に染まる。


 「この女」? なんだ? この反応の薄さは。


「に、兄さん! 私よ、マヤよ。ずっと、ずっと待ってたのに。どうして戻ってきてくれなかったの。どうして、こんなことをするの!?」


 マヤはがなりたてるように言うと、グランは再び彼女を見た。

 敵を見る訳でもなく、かと言ってきょうだいを見る訳でもなく。

 彼の瞳は、興味なさげだった。


「どけよ」

「に、にいさ……」


 マヤが言い終わる前に、突如として彼女の翼が燃えだした。


 コントロールを失いそうになるが、彼女は必死に宙でもがく。

 そして、すがるように言う。


「どうして、兄さん!! あなたを追って、ここまで旅してきたのに! 何か、何か言ってよ!」


 グランはただ、バランスをなんとか保ちながら飛び続けるマヤを見ている。

 そして、言った。



「お前など、知らん」

「えっ……?」



 マヤの表情が一瞬にして凍り付き、翼が消滅する。

 彼女はそのまま、街へと落ちていった。


「……何ですの、今の」


 レジーナが不思議そうに言う。

 だが、グランからの返答はなかった。


「レジーナ、聖域に戻るぞ。ソルテスに連絡をとっておけ。ビンス、後はお前に任せる。しっかりと印をつけてから戻ってこい。奴らの戦力分析も忘れるな。レベルは違っても奴らは『ブレイク』能力者だ」

「ええっ、ちょっと!? グラン君、厳しすぎないかい? なんだい、このリブレとの落差は!」

「うるせえ。てめーは生きていられるだけありがたいと思え。ただでさえミハイルとリブレのバカの子守で忙しいんだ。もう助けねえからな」

「おいおいおいおい! グラン君!」


 二匹のドラゴンが、聖域への方へと飛んで行った。


 ビンス・マクブライトはそれを見送った後、にやりと口角を上げた。


「ま、一人でやっていいって言うのなら、好きにさせてもらおうかな。ハヤトに『ゼロ』、そしてミランダ。ここには僕の欲しいものが全部そろっているからねえ」

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