その2
「勇者ハヤト・スナップは、君の目にはどう映ったかな、シェリル?」
中庭への通り道を歩く途中、ルドルフがふと言った。
シェリルは先頭を歩く彼を見る。
「ぱっと見は少し頼りない感じもしますけれど、お強い方です。『蒼きつるぎ』ももちろんですけれど、それ以上に、心が強い方だと思います。彼をサポートする仲間の方々も、ミランダさんを始め、腕利きの方ばかりです」
「ほう、ずいぶんと肩を持つようになったね。最初はあれだけコリンと疑ってかかっていたというのに」
「はい。その考えは、間違いでした」
ルドルフは目をぱちくりさせて振り返った。
シェリルは、彼をまっすぐに見つめている。
一体、なにがあったっていうんだ?
「意見を尊重しよう。ではコリン、君はどうだ」
コリンは視線をはずした。
「……ハヤトに関しては、シェリルの言う通りだと思います」
「では他のメンバーは、どうなんだ?」
コリンはひとテンポおいてから、言った。
「マヤは生真面目すぎるきらいがありますが、ハヤトのサポート役としてだけでなく、単独戦力としても魔王軍に対抗できます。ルーはガキですが、ま、魔法の……天才だと思います。ロバートは、ぜんぜんダメですが、チームのムードメーカーです。ミ、ミランダは……魔法を無効にできる力があり、あのパーティで最も重要な戦力です」
ルドルフも、シェリルも立ち止まった。
コリンも、自分で言っていながらちょっぴり意外そうにしていた。
「……ソルテス様と戦うに、値すると思うか?」
「は、はい。それにハヤトは、ソルテスの兄だと自称しています」
「聞いたことがない話だ。本当なのか?」
コリンは、下を向いたまま、小さく言う。
「私は、本当だと思います。ハ、ハヤトは、うそをつくような人間じゃありません、から」
ルドルフはその様子に、思わず笑ってしまった。
どうやら、あの連中は本物のようだ。
「わかった。では私も、君たちを信頼しているように、彼らを心から信用することにしよう。改めて、聖域への案内を頼む。彼らを導いてくれ」
「はい」
ルドルフは中庭の方へと歩いてゆく。
シェリルが、コリンを呼び止める。
「コリン。みなさんの名前、きちんと覚えていたんですね」
「あ、あいつらには言わないで」
「どうしてですか?」
「だ、だって調子に乗るもの。とくに、ミランダが……」
頭にハテナマークを浮かべたシェリルだったが、彼女はやがてほほえんだ。
「聖域も、みんなで行きましょうね」
「……ええ」
コリンも、つられて少しだけ笑った。
だがその時、遠くからルドルフの叫び声が聞こえた。




