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イモータル・マインド  作者: んきゅ
第15話「再会」
129/212

その1

「それで、首尾はどうだったかな。ハヤト・スナップ君」


 ルドルフ・ザイドが、謁見の間で笑顔を見せた。

 ハヤトが一歩前に出る。


「……色々とありましたけど、なんとか四精霊からの契約を得ることができました」


 ルドルフは頷いた。


「君ならやり遂げると思っていたよ。コリンもシェリルも、よく無事に戻ってきた。ご苦労だったね」

「ありがとうございます」


 二人は同時に言った。とくにコリンは、この旅で数回見せたかどうかの笑顔を彼に向けている。


「聖域には、明日経つのかい」

「はい。うかうかしていられませんから」

「ならば、今日は部屋を用意しよう。ゆっくり休んでいってくれ。コリンとシェリルは、悪いけど春の精霊様の仕事を頼むよ」


 返事を聞いたルドルフは、勇者一行の顔を見た。

 全員が、かつてここに来た時よりも強く成長したように感じられた。


 ルドルフは、満足げにそれを眺めたあと、部屋に戻っていった。



「ああ、やっぱりここはいいね」


 大通りに出たミランダが伸びをする。

 気持ちのいい風が吹いていた。

 ロバートは心地よさそうに、風を手に乗せている。


「確かに、オータムとここ以外は人が住めるような環境じゃなかったからな。ついこの間まで極寒の中にいたってのに、なんだか変な感じだよな。ハヤト君みたいに風邪を引いちまいそうだ」

「そうなったら、ロバートはここに置いていくの。どっちにしろ役に立たないの」

「ルー、『ブレイク』して強くなったからって調子に乗るなよ。未来を見るだかなんだか知らないが、この分だと次は俺の番なんだからな」

「どうだろうね。ロバートが力を手にしたって、どうせしょぼい能力に決まってるよ。料理が上手になるとか、人をからかわないとか、アタシの肩を揉んでくれるとか」

「それはただのお前の願望だろ!」


 談笑する一行をよそに、ハヤトは大通りをぼおっと眺めていた。


 「ザイド・アトランティック」号の戦いを経てここにたどり着いたのは、一体何ヶ月前だったろうか。

 あの時に破壊された港は、もうすっかり元通りになっていた。


「戻ってきたわね」


 マヤがぼそりと言った。


「ああ。なんだか、いまいち実感がわかないな」


 それくらい、熾烈な旅だった。

 どの場所でも、命をかけた死闘を経験した。

 楽しいだけではない、正直言って、辛く厳しい旅だった。


 それでも、ここまで戻ってきたのだ。


 そして。


「ねえ、みんなでまた飲まないかい」

「いいですね。ハヤト君、今度こそお酒飲んでよね」

「ルーも飲むの!」

「お前はちょっとだけだぞ。すぐ寝ちまうんだから」

「ロバートだってこの間またブリッジして頭打って気絶したの! ルーにそんな事言う資格ないの!」


 ハヤトは、これまで旅してきた仲間たちを、不安げに見ていた。

 それに、ロバートが気が付いた。


「どうした、ハヤト君?」

「い、いえ。あの……俺、確かに話しましたよね?」


 ハヤトはあの雪山の頂上で、自分が別世界から来た人間であることと、ソルテスと呼ばれる少女が自分の妹とそっくりであることを話した。


 だからこそ、異様だった。

 反応が変わらなさすぎる。


 ミランダが鼻で笑う。


「なんだいハヤト、あんたまだ気にしてたのかい? 確かにあんたがソルテスの兄貴かもしれないって話はびっくりしたけどさ、あんたはそれ以前に『蒼きつるぎ』の勇者なんだぜ。別世界がうんたらってのはよくわからないけど、勇者様なら、それくらいでなけりゃあね」


 ロバートがハヤトの肩をくむ。


「それにハヤト君。きみはきみだろ。それとも、俺たちが話を聞いて、いきなり態度を変えるとでも思ったのかい? だとしたら見くびられたもんだ」


 ハヤトは、それを聞いてはっとした。

 ルーがハヤトの足にくっつく。


「そうなの! ルーはハヤトと一緒に行くって決めたの! 関係ないの」


 最後にマヤが、彼に向かってほほえみ、手を差し出した。


「そうよ。どうしてもっと早く言ってくれなかったの? もしソルテスが妹さんなら、心配に決まってるし、どうにかして会いたいに決まってるわよね。……私も、それは一緒だから。だから、行きましょう」


 ハヤトは思わず、つうと涙をこぼした。

 全員が驚く。


「えっ!? どうしてそこで泣くの!?」

「どこかいたいの?」

「ち、違うよ……なんだか急に……」


 嬉しかった。

 知らない世界で。これまで、阻害されていたような。

 助けられてはいても、一人っきりで戦ってきたような、そんな気持ちが少しばかりあった。


 でも、彼らはもう、自分を受け入れてくれる仲間なのだ。


 ハヤトはただ、それが嬉しかった。

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