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イモータル・マインド  作者: んきゅ
第14話「冬山に想う」
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その7

「なんだい、これは」


 ミランダが声をあげる。

 頂上付近までやってきた一行が見たのは、直径十メートルくらいの丸い台座だった。紋様のようなものが刻まれている。


 コリンが前に出る。寒さのためか、鼻が真っ赤だ。


「ここが、冬の精霊を奉る場所」

「ゴール地点ってわけか」


 ハヤトがマヤに支えられ、よろよろと歩いてきた。

 シェリルの頑張りのかいもあり、彼は話せる程度には回復した。


『誰?』


 女性の声が聞こえる。コリンが反応して言った。


「冬の精霊様。コリン・レディングです。契約に参りました」

『まあ』


 嬉しそうな声と共に、台座から一人の少女が現れた。


『久しぶりじゃない、コリン。少し背が伸びた?』


 見た目はコリンと同世代くらいだが、その所作一つ一つに、大人びた雰囲気と、異様な妖艶さが見られた。


「お久しぶりです。背は思ってたよりも伸びていなくて……」

『大丈夫よ、あなたはこれからもっときれいになるわ』

「ありがとうございます」


 冬の精霊は、これまでの精霊たちに比べると非常に親しみが持てそうだったが、契約の話をコリンから聞かせられると表情を変えた。


『なあるほど。つまりあなたたちは私と契約した時点で、聖域へ行く資格を手にするというわけね。コリンのお願いだからすぐに聞いてあげたいところだけれど、私の責任は重大だわ。悪いけど戦闘を通してテストさせてもらうわよ』


 ハヤトは頷く。


「はい。元からそのつもりでここまで来ました」

『いい心がけね、新しい勇者様とやら。でも、私は甘くないからね。コリン以外は、弱かったら殺してしまうわよ』


 ミランダはそれを聞くや否や歯を見せて笑うと、外套を捨てて槍を構えた。


「いいねえ、あんた! 実にわかりやすくていい! アタシはこういう展開をずっと待ってたんだよ! さあ、とっととやろうぜ!」


 マヤは「紫電」を抜く。


「ミランダさん。力を見せるだけでいいんですよ。本気を出して、倒してしまわないで下さいね」


 ロバートが笑いながら弓を構える。


「マヤちゃん、そりゃ言うだけ無駄だ」


 ハヤトも剣を抜く。体調は悪いままのようだが、その眼には力が戻っている。


「最初から本気で行こう、みんな。コリンとシェリルさんはサポートを頼む。戦いは俺たちがやる」


 シェリルは頷いて“魔力”の錬成に入る。

 コリンもナイフを抜いた。


『さあ、かかって来なさい!』


 冬の精霊が氷で剣を生成すると、吹雪が一層強くなる。

 こうして戦いが始まった。


「『ライトニングブースト』!」

「『オーラアロー』!」

「うおおおおっ!」


 剣戟と魔法が交錯する。

 一人の少女が、それを傍観していた。


『凍りなさい』


 精霊が魔法を放つと、その周囲に一瞬にして氷の道が精製された。

 魔法はハヤトに向かって一直線に進む。不調で「蒼きつるぎ」を出すこともできていないハヤトは動きも悪く、避けられそうにない。

 ミランダはそれを見て不敵に笑う。


「待ってました!」


 ミランダの体が輝くと、一瞬にして白銀色の鎧が装着された。

 彼女がかばうようにしてハヤトの前に立つと、魔法が鎧に吸われるようにしてに消え去った。


「悪い、ミランダさん」

「いいってことよ。これはアンタのための鎧だ!」


 ミランダがそう言ったのもつかの間、精霊がいつの間にかハヤトの背後にまで迫っていた。


『甘い!』


 またしても氷の魔法が炸裂する。

 だが、ハヤトの姿はそこにはない。

 精霊もさすがに驚きを隠せない様子だった。


『今度は、上!?』


 「翼」を発動させたマヤが、ハヤトを掴んで宙を舞っていた。

 吹雪のせいでうまく飛ぶことはできなかったが、攻撃を避けるには十分だった。


「ありがとう、マヤ」

「いいのよ。ハヤト君は『蒼きつるぎ』を出すのに集中して。ここは私とミランダさんで!」

「俺も忘れないでくれよな!」


 ロバートも弓を乱射する。

 冬の精霊は舌打ちした。


 だが。それよりももっと大きな舌打ちが、別の場所から発せられた。

 勇者一行の中で、ルー・アビントンだけが何もせず、ただ不満げにそれを見ていたのであった。

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