その3
二人は外に出た。マヤはぴっちりとした白い服に着替えているが、隼人はパーカーのままである。
「し、城が!」
マヤが指をさす。城の方角から煙が上がっている。彼女が走り出したのを見て、隼人もそれに続く。
城の付近にある広場はざわめきにつつまれていた。
マヤは、すぐ先の露店へと走った。
「騎士団のマヤ・グリーンよ。いったい、何があったの!?」
店主は焦った様子で店じまいを始めていた。
「とつぜん城壁が爆発したんですよ! たぶん魔法のたぐいだ。暴発ですかねえ。モンスターとかじゃなきゃいいけど。近頃、何かとぶっそうだからね」
マヤは礼を言うと、人垣に飛び込んで城の方向へと走った。隼人もどうすればいいのかわからないので、とりあえずついていくことにした。
ベルスタ城は騒然としていた。マヤは城門前に集まっている、同じ服を着た人間たちの方へと走った。彼女に気づいた白い服の男が、片腕を胸に持っていった。
「マヤさん! 戻られてたんですね」
「何があったの、説明して!」
別の女性がマヤの前に立った。
「第ニ城壁が、何らかの手段で爆破されました。現在、原因を調査中で……」
彼女が言い終わる前に、後方からまた轟音が響いた。
マヤは後ろを振り返った。
「嘘……」
外壁の門が崩壊するとともに、外壁近くの大きさの、大きな赤い竜がこちらを見据えていた。