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イモータル・マインド  作者: んきゅ
第13話「オータムの決闘」
118/212

その21(終)

 ハヤトには、何も言えなかった。

 ただ、アンバーの顔を見ることしか、できなかった。

 彼女は無表情で彼に言った。


「どういうことだ、とでも言いたそうだな」


 混乱していた。

 今見たものは、いったい何だと言うのだ。


「ど、どうしたの、ハヤト君?」


 マヤが彼の肩に手を置く。

 どうやら、自分しか見ていないらしい。


「アンバーさん、今のは……」

「真実だ。私の身に起こった、全てだ」

「で、でも……!」


 ハヤトは、振り返る。

 ロックが不思議そうに見返してくる。シェリルも、きょとんとしている。


 ハヤトには、それを形容すべき言葉が出てこない。


 どういうことなのだ。


 アンバーは表情を変えずに、彼を見る。


「言ったろう。『蒼きつるぎ』の力は私たちの理解を超えていると。はっきり言って私にも、なぜこんなことが起こっているのか検討もつかぬ。しかし……どちらにせよこの現状は悪い冗談だ。まさに絶望と呼ぶにふさわしいだろう」

「で、でも! ロックさんたちはここにいるじゃないですか」

「確かに、そうかもしれない。だが私からすれば、今見ているものは幻、または悪夢でしかない。……ハヤト、お前にも同じ事が、起きるのかもしれないのだぞ」


 ハヤトが返答しかねているうちに、空間にびしびしと亀裂が入り始めた。


「どうやら答えは出ないようだな。せいぜい悩んでくれ。それでも進むというのなら行くがいい。それこそが君の運命という奴なのかもしれんな」

「運命……」

「運命が定まった時に、また会おう」


 アンバーの作った空間が、崩壊を始める。

 ハヤトには、何も言い返せなかった。


 運命。

 それがもし、アンバーの言う悪夢、絶望といったものに向かうのだとすれば。

 それにあらがう手段は、存在するのだろうか。


「シェリル、そしてロック」


 アンバーは、静かに言った。


「アンバーという女のことはどうかもう……忘れてくれ。神器も返す。これで全て、元通りだ。私たちとお前たちは、表現するのが難しいのだが……もはやわかりあえない」

「アンバー、拙者はそうは思わない! お前が戻ってくればといつも、そう考えていた」

「拙者……ね」


 アンバーはそれを聞いてなおさら悲しげにした。


「アンバー、拙者は!」

「アンバー・メイリッジは死んだのだ。忘れてやってくれ。おそらくそれが、お前たちが知るアンバーという女が一番望むことだ」

「あね様!」


 アンバーはそれ以上、何も言わなかった。


 その後、ハヤトを始めとした八人の戦士たちは秋の忍に戻り、神器を元の位置へと戻した。

 里の忍たちは大いに喜び、ハヤトたちを英雄としてもてはやした。

 だが、忍頭たるロックと元秋の忍であるシェリル、そして勇者のハヤトに笑顔はなかった。


 アンバー・メイリッジの姿は、そこにはなかった。

【次回】

少年たちは、雪道を行く。

決心する者。考える者。悩む者。

歩く道は同じでも、歩む道は、違う。


次回「冬山に想う」

ご期待ください。

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