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イモータル・マインド  作者: んきゅ
第13話「オータムの決闘」
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その19

「侵入者だと?」


 フローラの屋敷で、ロックが言った。目の前には傷だらけの忍が手をついている。


「はい。おそらく人間ではありません。春の都を襲ったという、魔王率いる魔族軍団と思われます。奴らは我々の理外の術を使います。すでに神器のうちの剣が奪取されました」

「なんてこと……! 神器が狙われているというの。いったい何のために……」


 驚くアンバーの肩を叩いたのは、里長のフローラ婆である。


「魔族……。かつて蒼き勇者に封印された者たちだね。神器を解放してザイドの魔神でも復活させようってところだろう」

「春の都は新たな蒼き勇者である少女と、その仲間によって救済されたという話もあります。彼女たちの到着まで、持ちこたえるしかありません」


 ロックが畳を叩いた。


「他者に頼れというのか!? 何のために我ら秋の忍がいると思っている! 俺とアンバーの二人でどうにかしてみせる。いけるな、アンバー」

「ええ」

「お待ちなさいな」


 フローラが二人を制止した。


「忍頭を勤めるあんたたち二人に行かれたら、誰がここを守るというの。剣が奪取された以上、ここにある鏡だけは死守しなければならないよ。アンバーは第四、五班を率いて玉のある社に。ロックは第一、三班とここを守りな。いざとなったら私も出る」

「御意」


 アンバーとロックは目配せして、頷きあった。



 アンバー率いる忍者軍団は、玉の安置される社にたどり着いた。


「それらしき輩は、どこにも見あたりませんね」


 アンバーのすぐ後ろに控えるシェリルが言う。


「油断するな、第二班があれだけやられた相手だ。相当の使い手だぞ」


 その時、轟音と共に後ろから仲間の忍の悲鳴が聞こえた。

 アンバーが振り返ると、一人の魔術師風の男が立っていた。

 男は忍の一人の首に手をかけると、“魔力”を練り、その頭を爆散させた。

 アンバーたちはそれを見るや弾かれるように武器を取り出し、男に向かっていく。

 男はうすら笑いを浮かべていた。


「オータムの忍か……まだ生き残っていたとはな。邪魔をするなら皆殺しだ」


 忍たちは次々と術を放つ。

 だが、男は消え去るようにして攻撃を次々によけてみせた。


 両手に剣を持つアンバーが、男の死角を取った。

 彼女は躊躇せず術に入る。


「『火遁』……!」

「角度はいいが、いささか遅いな」


 男が雑に手をなぐと、突風が起こった。

 つむじ風に切られ、彼女の体じゅうに傷が刻まれた。


「うわああああっ!」

「あね様!」


 シェリルが助けに入る。

 男は、興味なさげに彼女を見ると、“魔力”の玉を造る。


「邪魔だ」

「おのれ、賊め! 『氷遁・白銀結晶』!」


 シェリルの手元から大きな氷柱が現れ、男に向かう。

 だが、男が手を掲げると、“魔力”の玉が一瞬にして細い矢となり、それを貫き破壊した。


「なにっ!?」

「どうせ無駄だが、うざったいので覚えてから死ぬといい。格上相手に言霊は厳禁だ」


 アンバーは、なんとか起きあがる。

 だが、彼女が見たのは、すでに死体となった仲間たちと、頭から流血して倒れるシェリルであった。


「シェ、シェリル……?」


 アンバーはシェリルを抱き上げた。

 頭を何かで撃ち抜かれ、すでに彼女は息絶えていた。

 アンバーは、信じられないといった風に唇を震わせた。


「大したことないな」


 男はすでに社から「玉」を持ち出していた。

 アンバーはクナイを投げるが、当たらない。


「きさま、絶対に許さんぞ……!」

「かまわん。興味がない。さて、最後の一つは屋敷だったな」

「ま、待て!」


 男はその場から消え去った。


 アンバーは、シェリルの骸をその場に寝かせて目を閉じてやると、屋敷へと向かう。

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