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イモータル・マインド  作者: んきゅ
第13話「オータムの決闘」
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その18

 森の中の河原沿いで、一人の男が昼寝をしていた。

 男は全身黒装束で、左目に眼帯をつけている。

 近くから、草をかすめる音が聞こえる。誰かが近づいてくる。それでも彼は、寝転がっている。


 ひゅんと、彼の元に何かが飛んでくる。

 忍たちが使うクナイだ。

 男は目を閉じたまま、眼前でそれをはしと掴んだ。


 続けて別方向から同様の攻撃があったが、男は掴んだクナイでそれを弾く。


「はあっ!」


 すぐ後ろから、刀を持った一人の女が飛び出してきた。

 男はようやく右目を開くと、その場を転がって斬撃をよける。


 女はころころと転がる男に向けて剣を振るが、当たらない。女はきっと目を鋭くさせて、“波動”を練った。


「『火遁・豪炎牙ごうえんが』!」


 炎に包まれた刀が、男に突き刺さった。

 女は顔をぱっと明るくさせた。


「やった!」

「お前にはそう見えるのか」


 すぐ後ろから、男の声が聞こえた。女が驚いて自分の斬ったものをみると、それはただの木だった。

 女は悔しそうに刀を納めた。


「ちぇっ、まただめだったか」

「ちぇっ、じゃない。術まで使いおって。俺を殺す気か」

「でも、そうでもしないとあなたには勝てないわ」

「そういう問題ではない。それに人を斬っておいて喜ぶな」


 女は、口をとがらせた。


「あのくらいじゃどうせ死なないくせに。あなたに一太刀浴びせられるのはまだ先になりそうね」

「いいや、そろそろだな。今日は正直危なかった。お前がもう一手、奥の手を持っていたらやられていたろうな。術の際、体を持て余しているように感じた。今度からは二刀を使うといい。そうだな、短い剣がいいだろう。それだけで、もう俺のところまで届くだろう」


 男が頭をかいて言うと、女はうれしそうに言った。


「本当?」

「ああ」

「約束は、まだ有効でしょ?」

「約束?」

「もう。あなたに一太刀加えることができたら、一緒になるって言ってくれたじゃない」


 男は、はははと笑う。


「そうだったな。その約束はもうやめよう」

「えっ……。ど、どうして?」

「これ以上続けたら、本当に殺されかねん。今日で終わりだ」


 男は困惑する女を、抱きしめた。


「お前を愛している、アンバー。一緒になろう」

「ロック……!」


 女、アンバーは涙ぐんで男、ロックを見た。

 二人はしばらく、抱きあった。



「あね様ーっ、あに様ーっ!」


 そこに、一人の少女が走って現れた。

 二人はそれを聞いてぱっと離れた。

 少女は、不思議そうに彼らを見る。


「こんなところにいらっしゃったのですね。今日も修行ですか?」


 ロックはせきをして言った。


「ま、まあそんなところだ。シェリル、もう今日の修行は終わったのか?」


 シェリルは大きく返事をした。


「はい! おんばあ様に火遁術をみっつ、雷遁術をふたつほど習いました」

「ほう……。まだ修行を始めて一年にも満たないというのに……。やはりお前には天分があるようだ。こいつはうかうかしていられんな。よしアンバー、今日は三人で模擬戦闘をやろう」

「は、はい」

「あね様、どうかされましたか?」


 アンバーは少しばかりぶすっとして、シェリルの頭をわしわしとなでた。


「シェリル……貸しにしておく」

「貸し? 貸しってなんですか?」

「お前が大人になったら説明してやる! ロック、始めましょう」


 


 それからしばらく、月日が流れたころ。

 幸せな生活を送っていた彼らの元に、一つの災厄が舞い込んだ。

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