その15
シェリルは必死に自分を追う手裏剣をよけ続けた。アンバーはそれをただ見ている。
「あね様っ! どうか……どうかこの戦いを!」
アンバーはそれを聞いて、手裏剣をひとつ増やした。彼女の表情に、感情はない。
シェリルは「ウォール」を精製するが、複数の手裏剣がびしびしびしと命中すると、すぐに壊れてしまった。
アンバーはつまらなそうに、手裏剣をもうひとつ手のひらに作り、確実に彼女の顔にねらいを定め、投擲した。
シェリルは反応できない。
「うっ!」
そこに、小柄な少女が飛び出してかばった。
「コ、コリン!」
コリンは腹に手を押しつけて転がり、自分にも向かってくるそれをかわす。手裏剣が次々と地面に突き刺さる。
「シェリルは、私が守る」
コリンは、手裏剣の飛び交うシェリルの前に立ち、ナイフで必死にはじく。だが、三、四回ほど手裏剣を叩いただけで、ナイフの刃はボロボロになってしまった。
「ダメか……!」
「いいえ、まだよ!」
今度はマヤがやってきた。彼女も竜巻の攻撃の影響で、体のそこらじゅうに傷を作り、髪も衣服もぐしゃぐしゃだった。
それでもマヤは力を振り絞って「紫電」を振り回す。
「……不愉快極まりない光景だな」
アンバーがつぶやいた。
これだけの力の差を見せつけられて、なぜ諦めないのだろうか。
このパーティに勝ち目はもはや、ないはずだ。
アンバーは、指をはじいて現在の倍以上の手裏剣を精製する。
「終わりにさせてもらう。……さらばだ」
アンバーは、ほんの少しばかり名残惜しげに、手をかざす。
手裏剣が、彼女らの元へと向かう。
「うおおおお!」
その時。
手裏剣に向かって、人影が現れた。
手裏剣全てが、強烈な勢いでその人物に向け、命中する。
土煙が立ち上り、アンバーは勝利を確信したが、声が返ってきた。
「おい、くそ女」
ミランダの声だった。
アンバーが少しばかり驚く。
煙から出てきた彼女は、白銀の甲冑を身にまとっていた。
ほぼ全身を包んでいる鎧には傷ひとつなく、きらきらと光を反射していた。顔まで包む兜の部分から、ミランダの力強い瞳が、アンバーを見据えていた。
「おめーは……一回ぶっとばさなきゃ気がすまねえ」
アンバーの眉間にしわが寄る。




